読書記録
02
2004/04/04
『マニ教』 著:ミシェル=タルデュー 訳:大貫隆/中野千恵美
2002 白水社文庫クセジュ 179P
訳者の大貫先生は、グノーシス研究に関して現在日本での第一人者。
大好きな先生の一人です。
今現在マニ教に関する本を一冊読むなら、とにかくこれでしょう。
誕生からマニの死、その内容、そして当時の背景など、最新情報満載です。
ともすればゾロアスター教と同じに見られがちなマニ教。
その倫理規範はモンゴルへの影響も見受けられ、結構歴史を動かした宗教で面白いです。
推奨度
★★★★
見出し
マニの誕生の場所と時 マニの両親 マニの父親の宗教 ムグタジラ派 「エルカサイ」 天使の告知 反エルカサイ派論争
預言者たちの印璽 旅と伝道 晩年
マニが読んでいた書籍 マニの著作 正典 マニ教の教父学 位階制 修道士の倫理規範 在家衆の倫理規範 典礼
物語 マニ教の神々一覧 五個組の体系
2004/04/03
『瞬間の直感』 著:G・バシュラール 訳:掛下栄一郎
1997 紀伊國屋書店 148P
何だろう、面白すぎる本、名著を三冊続けて読んでしまったからか、おかしな程につまらない。
内容自体はそんなに面白くないなどということはないはずなのに、どうにも興が乗らない。
そう、だから人間の感覚などといったものはアテにならない。
内容としては、時間論で、ベルクソンの純粋持続批判。
つまりは時間の本質は瞬間派。
ちなみに、本論より最後の詩に関する論文の方が面白かった。
推奨度
★★
大見出し
瞬間 習慣の問題と非連続的時間 進歩の観念と非連続的時間の直感 詩的瞬間と形而上学的瞬間
2004/04/02
『禅の道』 著:オイゲン=ヘリゲル 訳:榎木慎吾
1991 講談社学術文庫 208P
何も書きたくないところだけれど、そうも云ってられないので少々書き留めておく。
未だ若造な自分ですが、20年近く片脚を禅道の傍流に突っ込んでいる身としては、
本当に善く解っている著者だなと感心しました。
読後、久し振りに30分程瞑想に耽った。
言語を弄することが無意味極まりないと思い至ったけれど、
意味が無いと同時にまた意味はある。
無駄だけれど同時に無駄ではない。
渾然一体、虚且つ真。
日本人には読みやすいと思います。
推奨度
★★★★★
見出し
禅の独自性 禅堂の修行 呼吸法 公案 「悟り」 公案体系 師家はどのようにして弟子の見性を「見分ける」のか? 日本演劇との関係
師家の点検 「悟り」による弟子の変化 禅と芸術 禅画 詩の中の「悟り」 見性体験に基づく思弁 日常生活における禅者の態度 禅堂
「山上また山あり」 禅の修行者の成長過程 修行の道 陰徳 放下 悟り、再生、仏性 慈と悲 不立文字 万物との交感 禅僧の理解力
禅者と世間、生活、日常 禅と古典的仏教瞑想神秘主義 雑事における忍耐と克己 禅は権力欲や宣伝とは無縁である 禅宗
人間の「擬我」 転換の道 芸道における禅と禅道における修行法との相違 存在の中心 人間の離心と人間の本質成就 思惟の役割
正義と慈悲
2004/04/01
『意識の形而上学─『大乗起信論』の哲学』 著:井筒俊彦
2001 中公文庫BIBLIO 176P
万感の念で胸一杯お腹一杯脳味噌一杯。
気付いたら時間経過を忘れていました。
改めて氏の早逝が悔やまれるばかりです。
内容に関しては1割理解出来ていれば自分としては上出来といったところでしょうか。
具体的事例は殆ど──というか一切?──記述無しです。
そんな圧倒されっぱなしの自分でも、少々内容に触れておきましょうか。
「計名字相」は西洋が近現代哲学に至って漸く辿り着いた、
特にベルクソンの純粋持続の概念などはそれに近いと思うのだけれど、
コトとモノ、“名”と対象について語られている。
この『大乗起信論』は6世紀の著作と推測されているもので、いや東洋哲学って恐ろしいですよ。
それだけです、ええ、それだけ。
推奨度
★★★★★
見出し
序 双面的思惟形態 「真如」という仮名 言語的意味文節・存在文節 「真如」の二重構造 唯「心」論的存在論
「意識」(=心)の間文化的意味論性 「心真如」・「心生滅」 現象顕現的境位における「真如」と「心」 現象的世界の存在論的価値づけ
「空」と「不空」 「アラヤ識」 「覚」と「不覚」 「不覚」の構造 「始覚」と「本覚」 「薫習」的メカニズム 倫理学的結語
2004/03/31
『ベルクソン 人は過去の奴隷なのだろうか』 著:金森修
2003 NHK出版 110P
シリーズ・哲学のエッセンス。
久々に面白い概説書を読んだ。
哲学に於いて分かり易いと云うのは良しとされないことが殆であるけど、
それでもそこそこに砕けた文体でこれくらいでもなければ、
入門書として機能すべき概説書の役割は果たせないのではないかと思う。
ベルクソンの空間時間概念を身近な具体例で説明しているため、
その具体化はホワイトヘッドにしてみれば言語道断かもしれないけれどそれはさておき、
日本語が読める人なら一度は読んでおいて損は無いはず。
この人って結構前から好きだったり。
推奨度
★★★★★
大見出し
純粋持続を探せ 量と質との戦い 純粋持続とはなにか 『創造的進化』にまつわる間奏曲
押し寄せる過去と、自由の行方 知覚という謎 記憶のありか 自由の泉
2004/03/30
『西田幾多郎 その軌跡と系譜』 著:藤田健治
1997 法政大学出版 148P
日本が誇る文章のおかしな人西田幾多郎。
漱石との比較部分は必読ですが、オススメはしません。
西田入門としては適当なのかもしれませんが、そもそも門戸を叩くこと自体あまりオススメしません。
日本仏教とドイツ観念論さらに19世紀の西洋哲学混交を熟知していて尚かつホワイトヘッドくらい読める人、
そうじゃなきゃ彼の著作は読んでもサッパリで眠くなるだけ時間の無駄でしょう。
いやホワイトヘッドが読めれば何でも読めるとは思いますが。
斯く云う私も彼の本は高校の頃に読んで死にました。
推奨度
★★★
大見出し
哲学の文学的考察 漱石と西田の共通性と相違 哲学者の表現 西田哲学の原理研究
西田の「非即の論理」 西田哲学における原理研究の転換 西田の歴史的世界
西田哲学における人間の問題 西田哲学の宗教的指向 悪への視点 西田以前及び以降
2004/03/29
『カバラ』 著:ロラン=ゲッチェル 訳:田中義廣
1999 白水社文庫クセジュ 167P
グノーシスと比べると矢張り民族的というか矮小というか狭義的というか、
まぁそれはそもそも比べるまでもないところなのだけれど。
ユダヤ思想を超えたところにありながらも、最終的には矢張りイスラエル固執思想なのですよ。
惜しいところまでいっていながらも土地や血に負けてしまう。
これを超えたものがグノーシスで、だからこそ類似しているのだけれど明確に対立している思想。
纏まりがない。
纏められないのがカバラやグノーシスなのですよ。
言い訳じゃなくて。
この本はカバラについて深く入り込むというより、概略史という面を押し出している。
だから纏められるけれど、これらのテーマを扱っている他の本って大抵オチがよく分からないまま終わる。
兎も角、ユダヤ史関係に着手しようとしている人なら入門として読んでおくべきかと。
推奨度
★★★★
大見出し
カバラの本質 古代のユダヤ教神秘主義 「ゲオニム」からラインの敬虔主義まで
1150年から1492年までのカバラ運動 初期カバラの世界像 サフェドのカバラとその遺産
2004/03/28
『比較都市史の旅』 編:比較都市史研究会
1993 原書房 309P
都市史というのは所謂世界史・国家史のミニチュア版と云えるもので、
そこそこに広いものが見える上で、より個人単位が見えて面白い。
衛生概念などは特にそうで、
それはつまり五感全てとは云わないまでも少なくとも嗅覚は違うものを持っていたと推測出来、
故にそういう点でも世界に対する見方というのが自分ひいては現代人全般と違うのだよなぁと。
昔の作品を鑑賞する際には常に念頭に置いておかなければならないことです。
推奨度
★★★★
大見出し
ヨーロッパ中世都市の形成 中世パリの都市環境 初代大司教ヘルミレス時代のサンチャゴ・デ・コンポステラ
都市共和制と人的ネットワーク 中世のチューリヒ フランクフルト・アム・マイン 都市ウィーンの近代化
イングランド北部の古都ヨーク 中国の都市杭州 日本近世の巨大都市江戸
2004/03/26
『古代ギリシアの旅─創造の源をたずねて─』 著:高野義郎
2002 岩波新書 199P
著者が量子物理学者で結構な御歳ということもあって面白い本。
幾何学概念が強いギリシア文化をその視点から観るというのは興味深かったです。
日本もよくよく引き合いに出され、ナルホドと。
右側交通・左側交通の理由をこの本から得られるとは思ってもみませんでした。
歴史学ではなくどちらかというと民俗学の本です。
推奨度
★★★★
大見出し
哲学のふるさとミーレートス ピタゴラス学派の聖なる数10 万物の根源を求めて
古典文化の花咲く都市アテーナイ 時計回りにめぐるペロポンネーソス 悲劇の舞台
2004/03/23
『古代ローマ帝国─その支配の実像─』 著:吉村忠典
1997 岩波新書 218P
とことん掻い摘むと、人間はいつの時代も腐ってますねという本。
そして腐っているだけでなくて、二面性があり、一義的に批判することは不可能だと。
まぁ中には確かにどうしようもなく腐敗しきっているのもいますが。
責める側と責められる側、どっちがどれだけ腐っているのかという問題。
何にせよキケロの弁論術が凄まじいというのは大いに認めましょう。
後は彼の残した記録の歴史的価値の重大性も。
勿論、こんな腐った話ばかりでもないのでお薦めの本です。
推奨度
★★★★
大見出し
シチリアの悪総督 総督は惜しみなく奪う ローマと属州 徴税の甘い汁 支配者の言説 波乱の前70年