読書記録
07
2004/05/29
『オマル=ハイヤーム ルバイヤート』 著:陳舜臣
2004 集英社 182P
超有名なセルジューク朝期イランの科学者であり詩人のオマルを代表とする四行詩集。
解説にも書かれていますが、
オマルは天球廻転論者でありデカルトより500年先立って三次方程式を解いた超絶者です。
読む前にそのことを頭に入れておくと、漠然と読むのとは違う。
これもバイアスといったらそれまでなので、一度何も予備知識無しに読めたらいいと思いますが、
ここ読んだ時点で上の情報は得てしまっているわけで、まぁそれはさて置き。
晴れて2004年にこの陳舜臣氏の訳が出版され、個人的には大喜びで諸手をあげて大絶賛。
批判しようにも批判するだけの能力もありませんし。
取り敢えず、今から邦訳版読むならこれ。
推奨度
★★★★★
2004/05/29
『ライプニッツ なぜ私は世界にひとりしかいないのか』 著:山内志朗
2003 NHK出版 123P
数少ないライプニッツ関係の書の中でも更に少ない入門書。
まずライプニッツの主要著作というものが纏められていなければ、
そのせいで研究者自体の数も少ないというスパイラル。
普通に暮らしていたら触れることの殆どない、
かのホワイトヘッドが認めた真の天才ライプニッツに気軽に触れられる美味しい一冊。
ホワイトヘッドのアクチュアルエンティティはライプニッツのモナドに影響を受けているので、
ホワイトヘッドに入ろうとしている人はこちらに寄ってからの方が良いでしょう。
ちなみに哲学者としての彼が最も有名なわけですが、どれだけのものか書かれているところだけ引用しましょう。
「彼はあらゆる学問における天才で、数学者、物理学者、心理学者、論理学者、形而上学者、歴史家、法律家、
文献学者、外交官、神学者、倫理学者、どの肩書で呼ぶこともできるし、哲学、自然法、国際法、記号学、
宗教学、教会統一、平和論、神秘主義、数学、語源学、比較言語学、中国学、天文学、物理学、光学、化学、
錬金術、医学、アカデミー計画、歴史学、文献学、古銭学、地理学のそれぞれについて、
天才的業績を挙げている」
推奨度
★★★★★
見出し
どしゃ降りにライプニッツ モナドの哲学 ライプニッツの時代 三十年戦争とライプニッツ ライプニッツの三大思想 <自分>という謎
<自分>の不思議さ 西洋近世と<自分> モナドの思想 モナドということ 窓のないモナド 孤独なモナド 夢見るモナド
ビュリダンのロバ ロバのビュリダン 区別不可能=同一の原理 理由律 個体性をめぐって 無差別性の不可能性 時空規定と無差別
無差別の不可能性 モナドの絆 モナド相互の絆 「実在的変化」 モナド相互の関係と交通 関係について 関係と絆 独我論
モナドと強度 モナドの内なる無限性 モナドの孕む無限性 「地平」ということ 普遍性と個体性 <自分>の唯一性
<今・ここ>にあること 唯一性について 偶然性 自由と偶然性 理由律と無差別 二種類の唯一性 世界にたったひとりの<自分>
謎としての<自分> 哲学は謎を問うものだ 謎を生きること
2004/05/27
『欧州百鬼夜行抄 「幻想」と「理性」のはざまの中世ヨーロッパ』 著:杉崎泰一郎
2002 原書房 242P
一度は読んでおかねば、と思い手に取る。
期待を裏切らずのなかなかな出来でした、普通に読み物として面白いですし、中世研究としても面白いです。
魔女狩りや宗教戦争異端弾圧のイメージが強くキリスト教一元的であるという偏見の強いヨーロッパでも、
土着の魂に染みこんでいる考え方はなかなか変わらない。
面白い一説は、言語学的な面からのアプローチで、異形生物の発生が翻訳ミスからなる、というものも。
推奨度
★★★★
見出し
怪人たち 異境の怪人たち 土着の民間信仰─巨人と小人 社会の周縁に住む者─野人、猿人 教会と怪人たち 怪獣たち
教会に刻まれたもの 文書に書かれたもの 自然物や自然現象 ドラゴンと蛇 動物神話の中のドラゴン(龍)と蛇 聖人とドラゴン
蛇女の伝説 神話、英雄伝説 幽霊たち キリスト教布教の時代 中世の死者祈祷と幽霊 幽霊を科学する─ゴシックの時代
幽霊の土俗化─中世末期 幽霊の姿形
2004/05/26
『知識社会学と思想史』
著:タルコット=パーソンズ 訳:油井清光/土屋淳二/杉本昌昭
2003 御茶の水書房 149P
よくまとまってはいるものの、何となく面白みに欠ける一冊。
読者側の精神状態に依存しているものなのかもしれませんが、微妙です。
悪くもないけれど、単純に合わなかっただけなのか。
推奨度
★★★
大見出し
知識社会学と思想史 デカルトと合理性の概念 カント カント以降の観念論と歴史主義 マックス=ウェーバー 不合理的構成要素の地位
相互作用と相互浸透 デュルケムとフランスの伝統 カール=マンハイム 合理性と科学における「価値自由」 知識の社会的規定要素
ユートピアの継起的変遷
2004/05/25
『大衆の侮蔑 現代社会における文化闘争についての試論』
著:ペーター=スローターダイク 訳:仲正昌樹
2001 御茶の水書房 149P
著者は現代ドイツ社会学の皮肉屋さん。
しかし毒が抜けていてなかなかに面白い。
最初から毒が無いのと、毒が抜けたのでは面白みが違う。
社会哲学の本なので、社会学・人類学・哲学・倫理学にオススメ。
難解でも無いので、すんなりと読めます。
以下引用。
「芸術というのは、我々自身には算出することのできない、
たとえ36回人生を送ったとしても算出できないであろう作品に向けられる自発的な情念なのである」
推奨度
★★★★
大見出し
人間の黒さ 概念としての侮蔑 二重の傷 人類学的差異について 大衆におけるアイデンティティー:無関心=非差異性
マス・メディア時代と「大衆」の弁証法
2004/05/23
『アイデンティティに先行する理性』 著:アマルティア=セン 訳:細見和志
2004 関西学院大学出版局 95P
久々に大ヒット。
こういう本がベストセラーにならないものでしょうか。
もう概ね同意、95パーセント同意。
残りの5パーセントは意識論というか些細なレヴェルなのでもうOKです。
経済学者でノーベル賞取ったセンの、社会学書。
内容をとことん突き詰めると、
「いい加減近代に勃興した下らない似非ナショナリズムを越えろお前等、
真のナショナリズムはそんなんじゃないはずだ、しかし今はそのことにまでは言及しない、
取り敢えずナショナリズムとしてのアイデンティティ以外のアイデンティティを強く持てよ」
とても読みやすい一冊なのでとにかくオススメ。
推奨度
★★★★★
見出し
利己心、アイデンティティ、経済分析 共同体、規範、合理的判断 正義と共同体主義からの批判
描写的役割とアイデンティティに関する選択 発見か選択か 責任と群集行動 認知と文化 越境するアイデンティティと正義
2004/05/22
『政治と精神分析』 著:ジル=ドゥルーズ/フェリックス=ガタリ 訳:杉村昌昭
1994 法政大学出版局 119P
下記の目次の通りの論文集。
ドゥルーズとガタリの有名な共著『アンチ・オイディプス』と『千のプラトー』間に出された、
彼らの反心理学的思考がよく分かる一冊。
特に二番目と三番目はそれがよく顕れています。
一番目と四番目のガタリのものが、タイトルと密接したそれであると云えるでしょう。
反フロイト的な自分としては大いに同意出来ます。
上記の有名な二冊を手にする前に、まずはこの一冊から。
推奨度
★★★★
目次
精神分析と政治 F・ガタリ
精神分析に関する四つの定言 G・ドゥルーズ
言表の解釈 G・ドゥルーズ/F・ガタリ/G・パルネ/A・スカラ
制度のなかにおけるシニフィアンの位置 F・ガタリ
2004/05/22
『ドゥルーズ 存在の喧騒』 著:アラン=バティウ 訳:鈴木創士
1998 河出書房新社 163P
生前のドゥルーズと対立していたバティウが書いた渾身の著であるのに、
訳が拙くて勿体ないと思えた一冊。
それでも評価3を与えたくなるくらい読ませるので、手に取ってみるとよろしいかと。
または、文に動詞が無く尻切れトンボであったり連接の仕方が意味不明だったりするのが気にならない人も。
……と、こういう風に予測の出来る尻切れ型ならまだいいのですが。
推奨度
★★★
大見出し
とても遠くから!とても近くから! どのドゥルーズなのか? 「存在」の一義性と名前の多数性
方法 潜在的なもの 時間と真理 永劫回帰と偶然 外と襞 ある特異性
2004/05/20
『歴史書を読む 「歴史十書」のテクスト科学』 著:佐藤彰一
2004 山川出版社historia 180P
フランク王国メロヴィング朝研究には欠かせないグレゴリウスの『歴史十書』を読み解く本。
細部に渡って検証していくなどということは、量が膨大過ぎて180Pなどではとても扱いきれないので、否です。
部分部分に焦点を当て、グレゴリウスの意図思想を探り、歴史整合性を確かめていこうとするという、
まぁごく一般の手法……、
と思いきや、終章に来て趣が変わります。
バルト的「間テクスト性」を持ち出して『歴史十書』に当て嵌めようと大胆な試み。
これには驚き、脱帽、驚嘆。
そして当て嵌め不可能なことを明らかにしてポスト構造主義のそれは、普遍の論理ではないと批判。
いやこんな手が出るとは思いませんでした、お見それしました。
フランク研究の歴史学を学ぶのは勿論、フランス思想系の人々にも呼んで貰いたいものです。
推奨度
★★★★
大見出し
グレゴリウスの生涯と著作 『歴史十書』とは何か テクスト構造と終末思想 沈黙のテクスト 『歴史十書』テクストの独自性
2004/05/20
『真理と実存』 著:J-P・サルトル 訳:澤田直
2000 人文書院 212P
帝王サルトルの集大成であり未完作。
サルトルは私を哲学の道に引きずり込んだ張本人なのですが、
数年振りに彼自身の著作に触れてみて改めて面白さが分かりました。
と同時に、セクシュアリティ視点から観てのフーコーの批判も然るべきモノと納得。
現象は実存であるから真理は個ゆえの真理、よって一切は実存。
思想家は、決して過去の人にしてしまってはいけないと思います。
しかしサルトルは大抵のフランス思想研究に於いて崩された人扱い。
彼のこの著作の結論を考察するなれば、決してそんなことは無いと思うんですけどね。
推奨度
★★★★