読書記録
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2005/04/05
『文系のための数学教室』 著:小島寛之
2004 岩波文庫 222P
先日、高校で数学の恩師と会った時に、
ラッセル、ホワイトヘッドやらフレーゲやらの論理学談義で盛り上がったわけですが、
とりわけ、この本の第一章で取り上げられた日常論理と数学論理の違いについては特に白熱したので、
何だか非常にタイムリーなネタで面白かったです。
っていうか著者は面白い人です、ジョルダン定理を線路に使って地図無しに自宅まで四時間かけて徒歩で帰宅とか、
途中で電車に乗ればいいのに、と思うこと受け合いです。
大学の文系学部在学者ならびに卒業者、
またはお決まりの文句で「数学が何の役に立つんだー」とか云う高校生なんかも、読んでみると面白いと思います。
ヴィトゲンシュタインとハイデガーについては、前期、とか後期、とかいう限定づけすれば、
根底に似通ったところがあるのは確かでしょう。
推奨度
★★★★★
見出し
数学でも「下手の横好き」ってあってもいいでしょ 棒グラフで微分積分読解術 数式は、眺め方がわかればこわくない
棒グラフからはじまる数学 立体棒グラフをイメージする さまざまな分野に応用ができる
棒グラフをイメージできれば、積分だってこわくない 積分から微分へ 具体例で微分を理解しよう 微分積分読解術
日常の論理と数学の論理 論理ブームたけなわ ハイジャック事件と論理学者 If文の構造
「かつ」「または」「でない」「もし〜ならば……」の文法が基本 「構造改革なくして景気回復なし」の論理学
「推論規則」としての論理のほうがずっと大切 セマンティックとシンタックス 「証明できること」と「正しいこと」の距離感 論理の代数
論理と確率のランデブー 「距離」を規制緩和する話 失恋の想い出 ジョルダンの曲線定理ってなに?
球面状とドーナツ面上で遊んでみよう 交わらないように配線する問題 ジョルダンの定理は、こんなふうに役に立った
数学はこのように意外性をもたらす 「距離」をもっと自由に 距離にとって一番大事な法則 距離の取り決めを変えてしまおう
鉄道路線図を距離空間に仕立てる 狭い日本の国土を広く使う提案 株価のグラフが似ている? 整数世界の新しい遠近法
距離空間はどんな役に立つのか 民主主義を数学で考える 不等式から政治の話まで 民主主義と数学 不等式にとって最も重要な法則
長方形を正方形で分割するパズル 推移律と経済社会との関わり 社会選択の問題に応用する
二者択一ではなく点数投票にしたらどうか 独立性の条件を導入すると アローの一般可能性定理 数学と民主主義の可能性
神の数学から世俗の数学へ 神の数学 デカルトの論法 我思うゆえに我あり スピノザの神学と資本主義経済の調和
パスカルは確率を利用した 期待値という賭けごとの基準 神への期待値 投機は、安く買い高く売って儲ける オプションの価格
要するに連立方程式を解けばいい 驚くべきことに期待値再登場 神と世俗をつなぐものこそ金融業 数学は<私>の中にある
数学は何の役にたつのか 能力テスターとしての数学 ウィトゲンシュタインの<私> 「価値」は「語りえぬもの」
数学は<私>の中にある ハイデガーの<私> 言葉こそ存在の住居である 心の中の幾何学
2005/04/03
『美と芸術の理論─カリアス書簡』 著:シラー 訳:草薙正夫
1974 岩波文庫 96P
シラーは己がカント美学の後継者であり超越者であると考えていたようですが、
解説にもある通り、この論文を読む限りではカント美学の射程を一歩でも踏み出ていないですね。
そもそも美を客観的に語ろうなんていうのはどだい無理な話であり、結局全てクオリアに還元されてしまう、と……
そう片付けるのは至って簡単なのですが、それだと美学の意義が見窄らしいものになってしまうので、
考察過程に価値があるものと考えるのが良しでしょう。
芸術に関わる人か、シラー好きな人にはオススメしておきます。
推奨度
★★★
2005/04/02
『リヒァルト・ヴァーグナーの苦悩と偉大』 著:トーマス・マン 訳:青木順三
1991 岩波文庫 222P
うーむ、実に見事なヴァーグナー論としか云いようが無い。
前述のファウスト論に匹敵する出来具合です。
ひょっとしたら、マンは小説よりこの講演集の方が好きかもしれない……。
小説あってこそのマンというのは確かですが。
今のところ私が読んだ限りでは、これ以上に読みやすく言い得て妙なヴァーグナー論書は無いです。
それもこれも、ゲーテ、ショーペンハウエル、ヴァーグナー、ニーチェ、を心の四天王と仰いでいて、
尚かつ己が優れた二十世紀を代表する文筆家であるマンだからこそできた芸当でしょう。
私もゲーテ、ショーペンハウエル、ヴァーグナーには結構惚れ込んでいるので、気持ちはよく分かります。
推奨度
★★★★★
大見出し
リヒァルト・ヴァーグナーの苦悩と偉大 リヒァルト・ヴァーグナーと『ニーベルングの指輪』
2005/03/31
『シュルレアリスム』 著:ヴァルター・ベンヤミン 訳:針生一郎
1981 晶文社 184P
一口に云って読みにくい。
ジッドとヴァレリーについてのエッセイは読む価値があるものと思います、面白いです。
それ以外はベンヤミン好きとかでもない限り、私はオススメしません。
研究資料に使うくらいでしょうか。
推奨度
★★★
大見出し
シュルレアリスム 夢のげてもの アンドレ・ジッドとの対話 ポール・ヴァレリー フランスの作家たちの現在の社会的立場について
パリ書簡
2005/03/30
『ゲーテを語る』 著:トーマス・マン 訳:山崎章甫
1993 岩波文庫 280P
前述の長大な講演より、こちらの四つの講演をまとめたものの方が読みやすくて面白いです。
特にファウストについて語っている講演は必読。
今までこれより面白いファウスト論は読んだことがありませんでした。
あちらこちらで注目されるファウスト博士については、マンは力を入れていなく別にどうだっていいのですが、
メフィストフェレスについて書かれたところが面白すぎる。
あぁなるほどこういう捉え方があったものか、と。
マン凄いですよ。
推奨度
★★★★★
大見出し
市民時代の代表者としてのゲーテ 作家としてのゲーテの生涯 ゲーテの『ファウスト』について ゲーテの『ヴェルテル』
2005/03/28
『ゲーテとトルストイ』 著:トーマス・マン 訳:山崎章甫/高橋重臣
1992 岩波文庫 240P
文の修飾法は実に見事なもので、筆記なら素直に頷けるものの、
これを本当に口で喋って講演したのか、と驚嘆を隠せません。
うーむ、マン恐るべし……。
その論の展開もうねうねとくねりくねって蛇行しまくり、ふと振り返ってみると、
一体どの道を辿ってきたのだか見失ってしまいます。
それだけ読み切るのに苦労するかというとそうでもなく、逆に全く苦もなくスラスラ読めてしまうあたり恐ろしい。
ただ、中身を把握しきるのは極めて困難です。
……把握しきるのが困難なんて、当たり前っちゃ当たり前なんですが。
“und”の使い方が下手だというニーチェに対するマンの批判は、軽快です。
推奨度
★★★★
見出し
シュテッツァー 優劣の問題 ルソー 教育と告白 拙劣ということ 霊場 病患 罹病 造形と批評 色事 自由と高貴性 貴族的優雅
懐疑癖 自然と国民 共感 告白と教育 教育 最後の断章
2005/03/26
『バハイ教』 著:P・R・ハーツ 訳:奥西峻介
2003 青土社 172P
ここまで手放しに称賛できる宗教がこの地球上に存在したとは。
以前から名前だけは知っていて気になってはいたものの、とっつき易い本を発見できず今に至っていました。
好印象なのは、この一冊がバハイ教を紹介して褒めているからというのも勿論あるのですが、
それだけに留まっていません。
真の世界宗教の名に相応しいのは、コスモポリタニズムなこのバハイ教でしょう。
キリスト教やら仏教やらの他の“世界宗教”とは、その徹底ぶりの格が違います。
成立年代が19世紀と、限りなく現代に近く、既存宗教の矛盾点を既にして克服しているのが筆舌に尽くしがたいです。
ガンディー並の非暴力不服従の実践を彼以前より行ってき続けているのは更に感服です。
どこかの学会と違って、勧誘も一切しないとのこと。
今一番興味津々なのが、このバハイ教です、とにかく一読あれ。
推奨度
★★★★★
見出し
バハイ教とその信者 分布 バハイ教の主な特徴 漸進する啓示 精神の信仰 世界共同体 バハイ教と個人 バハイ教としての統一
バハイ教徒と社会政策 バハイ教の原理 バハイ教の独自性 バハイ教の基礎 ペルシアのイスラム教化 十二番目のイマーム
バーブの出現 バーブの宣言 初期のバービ教運動 バーブの伝言 バービ教徒の受難 入牢と審問 ベダシュトの会議
バービ教徒の籠城 シャイフ・タブレシー廟の攻囲戦 籠城の終焉 バーブの死 バービ教の崩壊 バハイ教の開祖バハーオッラー
ミールザー・ホセイン・アリーのバービ教入信 迫害の増大 神の摂理を顕現する者 追放 ミールザー・ヤハヤー バハーオッラーの復帰
リドワーン宣言 新宗教の誕生 バハーオッラーの宣言 アッカー幽閉 バハーオッラーの晩年 バハイ教の聖典 バハーオッラーの著作
翻訳 バハーオッラーの教え 『隠されたる言葉』 『確信の書』 『最聖の書』 補足の文書 『七つの谷』 アブドル・バハーの著作
バーブの著作 バハイ教の流布 オスマン帝国とエジプトのバハイ教 英領インドとビルマ ロシア領のバハイ教 母国のバハイ教
アブドル・バハー 継承問題 バハイ教の西洋への流布 アメリカでの動乱 アブドル・バハーの指導 アブドル・バハーの旅
第一次世界大戦 アブドル・バハーの晩年 ショーギ・エッフェンディ ショーギ・エッフェンディの就任 バハイ教の正典 管理運営計画
教育計画 バハイ世界本部 神の大義の手 ショーギ・エッフェンディの遺産 バハイ教の信仰と礼拝 精神の旅 天与の本性
バハイ教の戒律 家族生活と子供 聖約 死と埋葬 バハイ教暦 十九日祭 バハイ教の聖日 バハイ教礼拝堂 バハイ共同体
バハイ教の行政制度 バハイ教の機構 精神行政会 万国正義院 バハイ世界本部 被任命職 バハイ教徒と共同体 今日のバハイ教
バハイ教の普及 炉辺集会 教育 開発の努力 バハイ教と国際連合 近代の迫害 イランにおける迫害 将来の課題
新しい世界秩序にむけて バハイ教と世界平和 世界社会の模範としてのバハイ教
2005/03/25
『漢字のはなし』 著:阿辻哲次
2003 岩波ジュニア新書 181P
以前読んだ著者の部首話とかなりの部分でかぶったネタが出てきますが、
ジュニア新書なのでそれより更に平易に書かれています。
そうかといって子供だまし的なところは無く、大人だろうが感心して読み進められます。
たとえば道。
異民族の生首ぶら下げて歩いていくからこういう漢字になった、とか。
なかなかほほぅ、と唸らせてくれます。
推奨度
★★★★
見出し
世界の文字のなかの漢字 漢字はこうして生まれた 漢字の誕生をめぐって 漢字の先祖・甲骨文字 文字と権力
紙の発明がもたらしたもの 現代につながる漢字文化 日本に漢字がやってきた 漢字文化圏 古代日本の文字世界
日本語を書くための工夫 日本人が作った漢字 漢字の作り方 漢字のしくみ 漢字の成り立ち 漢字を作る裏舞台
字形は変わる、部首も変わる 漢字の現在と未来 漢字の危機のなかで コンピュータと漢字文化 漢字は情報化社会に生きる国際文字
2005/03/25
『君たちに伝えたい言葉』 著:大江健三郎/ハロルド・クロート
2001 読売ぶっくれっと 72P
大江健三郎、ハロルド・クロートというノーベル賞受賞者の中学生に対する講演、そして質疑応答。
なので、口語体で読みやすいです。
まだ中学生だから仕方ないのか、中学生なのだからもっとしっかりしてくれという気持ちもありますが、
質問がかなり稚拙のため、応答のところは読んでも為にならないかもしれません。
中高生向けなので、中高生が読むぶんには問題が無さそうですが。
推奨度
★★★★
大見出し
君たちに伝えたい言葉 バッキーボールC60の発見
2005/03/23
『新しい教養を拓く 文明の違いを超えて』 編:筒井清忠
1999 岩波ブックレット 54P
教養と一口に云っても、所変われば時が変われば様々な内実に流転していくもので、
さて現代日本における教養の在り方は如何にあるべきか、といったことが主題。
見出しの通り、古代ギリシア、古代中国、中世イスラム、現代フランスが舞台です。
それぞれ著者が違い、切り口も語り口も変わってくるので、あっさり読めて面白いです。
推奨度
★★★★
大見出し
古代ギリシアの教養─教育・自由・民主政 中国の士大夫と古典的教養 前近代のイスラーム世界における「教養」
教養はなんのために─現代フランスの教育事情 教養の新生に向けて