読書記録
09
2005/06/06
『記号論と社会学』 著:亘明志
2004 ハーベスト社 156P
元は1986年初版のもの。
特に記号論/記号学の使い分けはしておらず、全部意図的に記号論で統一しているとのこと。
あまり社会学、っていう感じもしませんが、そもそも社会学って微妙なところだというのは著者も認めているようなので、
まぁ社会学な匂いが少なくても問題無いでしょう。
いわゆるところの現代哲学、ポストモダニズム思想家は日本人も含めてかなり手広く言及されていまして、
了解を前提として用語を使用し先に進んでいくので、ハードルはかなり高めかもしれません。
が、ある程度の基礎知識があれば、相当に面白く読めることでしょう。
序盤はそれほどでもありませんが、後半、ボードリヤールが出てくるあたりから、俄然面白味も出てきます。
記号論、言語学に興味があるのなら、一読すべき名著。
推奨度
★★★★★
大見出し
記号論点描 ソシュールの記号の定義 恣意性・差異性 三角形のなかの記号空間 「構造」の単位 実体と形式
意味の準位─言語学と記号論 消費の記号論/記号論の消費 神話作用 コノテーションとメタ言語 神話作用とレトリック
解読と解読の彼方 消費の記号論の場 記号形式と価値形式 指示対象の蜃気楼 ハイパー現実とシミュラークル
記号論的装置とセミオクラシー 記号論と外部 浮遊するシニフィアン 主体のトポロジー 非=意味生成的記号論 無根拠性と外部
外部としての権力
2005/06/05
『これならわかる日本の歴史Q&A 2 鎌倉-江戸』 著:加藤文三/市川真一/石井郁男
1992 大月書店 132P
分量的には江戸時代がかなりのものを占めていて、もうちょっと他の時代にも割いてくれたらというのが希望。
日本史はかなりからっきしなわけですが、こうして読んでみると、鎌倉の後、室町の前という、
分裂時代が一番好きですね。
うーん、何故でしょう、戦国時代はメジャーすぎるから、とかそんなことも無いとは思うんですが……。
まぁとにかく、小学校で少し歴史をやっておけば、読めるような簡単なものだと思います。
推奨度
★★★★
大見出し
平氏と源氏 「いざ鎌倉」 農民の抵抗 元の襲来 『太平記』の時代 室町時代の文化 山城の国一揆 鉄砲の伝来 戦国時代
信長の政治 太閤秀吉 徳川幕府の成立 鎖国 士農工商 江戸の町 元禄文化 徳川吉宗 百姓一揆 蘭学事始め 大塩の乱
2005/06/04
『スピノザの世界 神あるいは自然』 著:上野修
2005 講談社現代新書 193P
えー、読んだ理由が、初めて図書館とか本屋で適当に手に取ったとか、必要文献として読んだ、とかじゃなくて、
他の人が読書記録にとりあげているのを見て、というものなので、かなり特殊な感想形態。
史上初に長いものになると思います。
ただ、なるべく読みやすいよう、一文一文を簡潔に、短く切っていくというスタンスは変えません。
えー、度々言及することになりますが、自転庫氏、すみませぬ、容赦下さい。
うーむ、今更私が何を言うべきなのやら、とか思わないでもないですが。
まずは、読みやすいです、早ければサラッと三時間かからず読めると思います。
これ読んで、その感化されたトコですが変な眼鏡かけないように我慢していた自転庫氏のブログ記事読んで。
僭越ながらに私も……。
「おまいらは俺か!」
うーむ、私の場合は、中学生のときに『エチカ』読んだんで、
下意識的にジワジワと洗脳されていたのかもしれませんが。
当然、当時は「何じゃこりゃぁ」って感じでほとんどチンプンカンプンでしたが、
思春期の頃は難しいものをカッコイイと勘違いしてしまうような、甘酸っぱいところがあるのが常なものでして。
これを機に、スピノザ読み直してみようかなぁと思います。
個人的には、サドとスピノザの関係が気になっていたりするんですよねぇ。
さて置き。
スピノザの「神」を「世界」と置き換えられるというのは、思いっきり読んでいる途中で思っていました。
何ていうか、某GPMというゲームの、「それが世界の選択だ」という時のあの「世界」っていう概念。
激しく余談で脱線ですが、あのGPMは一つの永劫回帰の形であり、しかし無限並列世界でもあり、という、
哲学的に鑑みても面白いものだと思います。
閑話休題。
全てが自己肯定である、っていう論について。
えー、完全な私論というか独自な言い回しだと思うんですが、
オリジナリティなんかサッパリ分からなくなってるので、置き置き置き、
あらゆる行動は逃げととれる、っていうのと同義なわけですよね。
どう考えたところで、結局はその時に自分が一番楽だと思うからこそその行動をとるわけであり、
楽な方へ進むことを逃げだと定義するのであれば、人間の行動とは全て逃げになってしまう。
狭いスパンで見ればその時にツライ選択肢をとったように見えようが、広いスパンで見ると、結局楽な方向だった、と。
例えば、物語なんかでよくあるもので、戦うか逃げるか、という選択に迫られる。
逃げる選べば、文字通り逃げ。
戦うを選ぶということは、逃げたら戦うことを選ぶよりもツライ精神的責め苦を味わうと予測してしまうので、
そんな辛さからは逃げようと戦う。
とまぁ、こんな具合に。
で、全てが逃げととれるのであれば、つまりそれはすなわち、全て自己肯定である、というのと同義かな、と。
あー、オリジナリティはどうでもいいとか云っておきながら、結局スピノザに言われていたわけで、少し悔しい。
まぁこれも、そもそもスピノザ読んだ影響の下部意識で(略
さて次、運命の必然性、ですか。
これももう、私も根本の所でスピノザと同じ立場なんですよね。
上のような、逃げの論理を持っていたわけですから、同じようなことを運命にも適用させたわけなんですよ。
以前に全く別なところで小説書いた時に、
キャラ同士の会話で運命とか語らせちゃったりしちゃったりしちゃったわけですが、
結局は全て運命である、と。
これが運命だと突き付けられて、その運命を変えるべく行動し、変えられたものだとしても、
“運命”を変えることが““運命””だったのだ、と。
うーん、これは分かりにくいですかね。
つまり、無限小と無限大に分割できる多重構造の運命があり、運命は運命によって塗り替えられ、といいますか、
結局、その多重構造を含んでいるのは最大極限の世界という運命であり、と……。
これって、よくよく考えれば、スピノザ的なのかライプニッツ的なのか、折衷的なのか、よくワカランですね。
ごめんなさい、分かる人だけ分かって下さい、こんなもん理解しなくても明日食うぶんには何も困りません、
多分ハイデガーの現存在なんかを理解するほうがよっぽど有用です、哲学的にも。
さてさて、ダラダラダラダラ無駄な言葉が多いので長くなっていますが。
自己懐疑も含めて、疑問を投げかけてみましょうか。
スピノザは、幾何学的証明をやっています。
で、世界は一つだ、と。
つまり、Aだ、と。
では、Aに属さないものは? 非Aは? 非Aとの境界線は? 境界条件は?
無い?
言語、つまり自己の認識の限界が世界の限界だとするヴィトゲンシュタインを、
遥かに飛び越えた世界を設定しているのがスピノザなわけで、それに同意もできますが、
あー、何て云ったらいいんでしょうかね、
結局は世界外なんぞ求めずに世界として画定づけられるところまでを認識するだけで満足してなさいよ、
ってことだとすると、そこのところは論理学としておかしいわけですし……。
って感じです、基本的に読書とか論文執筆でもないのに一人で深く考えるってのは苦手なんで、
もう投げます。
でもこういう口語体でいっぺん本出してみたい気はしますよ。
すっごい思考の渦に巻き込んで蛇行しまくりで、
読後に何だったんだかよくわかんねーけどスゲー、みたいな感想抱かせられたらいいなぁ、と。
……だから、そう思って下さると嬉しいです。
推奨度
★★★★★
見出し
企て スピノザ自身による入門書 純粋享楽を求めて 喜ばしい賭 剰余 目的とは衝動のことである 欲望は衝動を知らない
最高善を定義する 真理 未知としての方法 方法は真理から自生する 何が何を真とするのか 真理の内的標識とは何か 真理の規範
知性の謎 神あるいは自然 『エチカ』 幾何学的証明 実体とは何か 神とは何か 神の存在証明(?) 唯一なる全体
内在的原因としての神 事物は別なふうにはありえなかった 人間 デカルトの残した問題 真理空間 精神は身体の観念である
精神はメンタルな能力なしで考える 倫理 自由意志の否定 自分をゆるしてやること 神と世界をゆるしてやること
人間をゆるしてやること 社会をゆるしてやること 事物の愛し方 永遠 無神論(?) 神への愛 永遠の相のもとに 第三種の認識
神の知的愛 そして至福
2005/06/01
『量子の革命』 著:ヴィクトール・ヴァイスコップ 訳:三雲昴
1993 丸善 104P
原著は1989年刊のものなので、ソ連邦崩壊前の核危機の記述が散見されます。
著者自身がすぐれた物理学者であるわけですが、物理学史の概観や、核問題、科学信仰問題など、
手広く入門向けに書かれていて、比較的易しく読めると思います。
個人的にはシュレーディンガーについてほとんど記述が無く、ボーアに偏りまくっていたので、
読中はかなり不満だったのですが、読後、別にボーアの入門書を読んだと思えばいいか、と思い改めたら、
なかなか良い本だと思えました。
というわけで、サブタイトルに〜ニールス・ボーア〜、とでもつけておけば尚良でした。
ボーアの相補性思想は、陰陽太極を援用すれば分かり易いかと。
まぁ無理もありませんが、著者はそこまで知識に及んでいないようなので、一応補足。
推奨度
★★★★
見出し
ニールス・ボーアと量子の革命 歴史の加速 ニールス・ボーアによる原子の構造 原子の構造から原子核の構造へ
電子の問題─ポール・ディラック 物理学における反響 量子の理論と天体物理学 量子力学の意味 原子の世界の現実性
量子物理学の正確さ 量子のはしご 空はなぜ青いか 物理学者の新しい仕事 現代物理学の社会的運命 核兵器
科学、技術、社会 基礎研究への賛辞 相補性の哲学
2005/05/30
『ハイデガーとナチス』 著:ジェフ・コリンズ 訳:大田原眞澄 解説:細見和之
2004 岩波書店 118P
ポストモダンブックス。
現代哲学関係の中で、一番関連した著作が多いんじゃないかと思っている種の話題のもの。
戦略的に見てもナチスに加担するってのは、後世の私などからしたらバカだなぁと思うのですが、
ハイデガーが一体何故ナチスに加担したのか、とかそのあたりについてはほとんど言及されていません。
ハイデガーがナチスに加担していたということが、後にどんな影響を与えていったか、
という方に重点が置かれています。
特に後半で、デリダがディコンストラクションでハイデガー問題を切り崩そうとしたという紹介の部分が、
なかなかに面白い読みでよかったです。
レヴィナスへの言及も忘れていなかったところが吉。
ハイデガーは、ヒトラー・ナチズムに賛同できなかったんであって、ハイデガー・ナチズムはずっと持ち続けていた、
という説は、私も以前から持っていました、やっぱり一番説得力あるんじゃないか、と。
推奨度
★★★★
2005/05/30
『フロイトと作られた記憶』 著:フィル・モロン 訳:中村裕子 解説:大平健
2004 岩波書店 109P
ポストモダンブックス。
フロイト叩きが多い昨今への批判。
フロイトの解説書やら通俗書だけを読んで、彼にバイアスをかけずに、
フロイトを批判したければきちんと手続きをとって、つまりちゃんとフロイトを読んでからにしなさい、と。
えー、何だかんだでフロイトを好きになれない私でも、その通りだと思います。
フロイトほど、滅茶苦茶に読まれてしまっている人も珍しいですよね。
まぁ、それだけ、色んな意味でトンデモなお騒がせをした人だということですが。
どうでもいいことですが、中学生の時、将来進みたい道は心理学でした。
サルトルから哲学にハマッて、何故か心理学に憧れ、んで途中で幻滅。
あの時期に心理学に対してかなり批判的になってしまったもので、なかなかその根底を覆せないです。
心理学への抵抗感はそのうち薄れますかねぇ……。
推奨度
★★★★
2005/05/29
『新編 新数学対話』 著:黒田孝郎
1991 三省堂選書 179P
原著は1941年刊のもの。
ですが、相当の部分を書き換えているものと思われます。
これは戦中のものじゃあないだろう、というような記述が多数見られますので。
にしても、核となる部分は書き換えるわけにもいかないでしょうので、
よくまぁこの時代にこれだけのものが出版されていたものだと感心しました。
ただ、現代からすると中身の割に1500円とちょっと高いので、定価で買ってまでは推奨しづらいところがあります。
推奨度
★★★
大見出し
三角形の角の和は180度 測ったら180度ではなかった 三角形の面積を求める 本当の面積を求める 桁数は多いほど確かか
太陽は明日も東から昇るか 帰納と演繹 三角形の角の和は二直角 180度は角度・二直角は図形 はるか左とはるか右との境目
正多角形を作る 正多角形のタイルを張る 正多面体のサイコロ ピラミッドの高さを求める 影の長さで求めたタレス
3500年前に書かれた数学書 100個のパンを13人に分配する 1年365日 正方形の対角線の長さ 60進記数法はメソポタミアに始まる
対角線の長さを求める 面積2の正方形 物差しで測れない長さ イスラム・古代中国の数学 バビロニアのピタゴラスの定理
句股弦の原理とピタゴラスの定理 方程式と正負術 損は益・益は損 復元と対比の法 数学の発展 農業専制国家の数学
都市国家における言論 ゼノンの難問 定義・公理・命題 長い直線から短い直線を切る 人間は知ることを欲する ロバでも知っている
ピタゴラスの定理の証明 「PならばQ」ならば「QならばP」か なにゆえにそうであるか
2005/05/27
『至福の超現実数 純粋数学に魅せられた男と女の物語』 著:D・E・クヌース 訳:松浦俊輔
2004 柏書房 174P
原著は1974年刊のもの。
ですが全然古臭さを感じさせられず、純粋数学はいつでもどこでも普遍的なものだということを思い知らされます。
頭に糖分の足りない時は厳しいかもしれませんが、脳内麻薬を出せるようなときに読むと面白いかと。
対話形式というか、微妙に恋愛小説テイストも入っていて、セックスとかいっちゃってる辺りが、
何て云うかもう、ナウいです。
数学は本来楽しいもののはず、なんですが、どうしてこう高等学校までのアレは、ねぇ……。
推奨度
★★★★
大見出し
岩 記号 証明 悪い数 前進 第三日 発見 足し算 答え 定理、定理、定理 プロポーズ 災難 復活 宇宙 無限 掛け算
2005/05/26
『はじめてのフランス語』 著:篠田勝英
1992 講談社現代新書 199P
講談社現代新書の、はじめての語学シリーズ。
このシリーズには、あまりハズレは無さそうです。
先日読んだイタリア語と同様に、語学の入門書の入門書、といった感じです。
あまり気張って覚えようとしていくのではなく、肩の力を抜いて、こういうものなんだ、
とサラッと読んでいくべきものでしょう。
最後まで読み通すだけで、フランス語の輪郭が浮き出てくるものと思います。
始めてみようと思うなら、まずこの一著ですね。
推奨度
★★★★
大見出し
発音と綴り字 単語について 文の構造 表現の拡大I 表現の拡大II よりよい表現のために フランス語をどう学ぶか
2005/05/23
『エーコとサッカー』 著:ピーター・P・トリフォナス 訳:富山太佳夫 解説:今福龍太
2004 岩波書店 116P
ポストモダンブックス。
今まで読んできたこのシリーズの中で、一番面白かったかもしれません。
何しろエーコについてのごく簡単な本というのは数少ないので、それだけでも価値有りです。
しかも、エーコにとってもかなり大きなウェイトを占めるサッカーというこの話題は、
普段読書をしないような人々の興味もさぞかし惹くことでしょう。
私もエーコ同様に、サッカーは嫌いではないがサッカーマニアは嫌いだ、という似たような立場ですから、
快く読めたというのがあるのかもしれませんが、無論それだけではないのでオススメです。
同シリーズ同著者の『バルトと記号の帝国』にも期待。
推奨度
★★★★★