読書記録

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2005/06/20

『近世哲学』 著:大村晴雄

1974 以文社 185P

原著は1954年刊の再刊版。

思潮っていう単語からして古さが窺い知れるものかと。

最近古い論文も併せて読み漁っているのですが、ヘルダーの載っている本というのは、本当に古いものしかない。

新しいところでは論文くらいしかないです。

サルトルなんかが廃れる理由っていうのは分かりますが、流行り廃りの波はよく分かりません。

まぁ、フィヒテと比べてシェリングなんかも結構忘れられがちのような気もしますが、

それにしてもヘルダーはもっとプッシュされても良いと思います、ということで、個人的にプッシュしています。

そんなわけでこの本著、ヘルダーが取り上げられているというのは再三の繰り返しにわたりますが、

大まかに云って近世初期からの哲学史として流れを概略的にまとめたものです。

古いのですが、古いからこそ今の私なんかからしたら新鮮な視点もあったりして、かなり面白いです。

とりあえず、近世最初期の思想家としては、スコトゥスとオッカムの二人が取り上げられ、結構長々論じられています。

デカルトやライプニッツなんかよりも扱いが大きいのが面白い。

まぁ、一つの思想を深く突っ込んでいく、というようなのを期待してはいけません、哲学史です、流れが大事。

推奨度

★★★★

大見出し

近世初期の諸問題 啓蒙思潮とドイツ思潮

 

2005/06/19

『神についての会話』 著:J.G.ヘルダー 訳:植田敏郎

1968 第三書房 242P

原著は1787年刊。

個人的な趣味で云えば、★は5つつけたいところですが。

対話編で、主にスピノザを、副としてライプニッツを語りつつ、それらを和合して独自の哲学を語る、

というような少し変わった弁証法的スタイルをとっているものです。

感触としては、註もきっちり読んでおけば、ヘルダー哲学の入門には最適な気がします。

というか、ヘルダー入門なんてほとんどありゃしないというか、現在かなり忘れられている人なので、

色々な意味で本著はオススメです。

誤字脱字が多かったりするのは、六十年代という古さのご愛敬ってところで。

付録の論文『ヘルダーにおける「力」の概念』も良い出来具合ですよ。

……と、ここまで書いて、やっぱり推奨度を5に変更。

推奨度

★★★★★

 

2005/06/17

『近代思想の夜明け─デカルト・スピノザ・ライプニッツ』 著:S.H.メローン 訳:中尾隆司

1987 行路社 182P

原著は1930年刊。

今からしたらもう75年も前のものなので、それほど大きくは解釈的変化は見られませんが、

やはり概説書としたら結構黴臭い感じがします。

そこは訳者の力量で豊富な訳注によってそこそこ補われていますが、

つまりは訳注をきっちり読まないとあまり使い物にならないですし、訳されたのも18年前ですので……。

何故だか一番ページ数の少ないのはライプニッツなわけですが、その分わかりにくさはピカ一。

一応、少ない紙幅で概説的に読める貴重なものという価値はありますが。

推奨度

★★★★

見出し

デカルト 生涯と人 デカルトの方法 物質的宇宙 真理の根拠としての神 精神と身体 有名な三人のデカルト主義者 スピノザ

生涯と人 認識の諸段階 神の観念と永遠性の観念 神の諸属生 人間の精神 道徳性 「神への知的愛」 ライプニッツ 生涯と人

認識の基礎 実体についての新説 モナドロジー 物質的世界 身体と精神 有神論と弁神論 ライプニッツとヴォルフ

 

2005/06/15

『ドイツ古典哲学』 著:ベルナール・ブルジョワ 訳:樋口善郎/松田克進

1998 白水社文庫クセジュ 168P

さすが文庫クセジュ、訳が何とも分かったような分からないようなで読みにくい。

ライプニッツもカントもヘーゲルも、何かまた分からなくなってきたような感じがしてなりません。

思想史の流れを掴むものとしては、よくまとまっていますし、

ベーメとかヴォルフとかハーマンとかヘルダーとか、マイナー(?)どころも少しは言及されてるので、

その点では推奨できます。

推奨度

★★★★

見出し

ドイツの前哲学からドイツの古典哲学へ ドイツの前哲学 中世キリスト教とドイツの前哲学 宗教改革とドイツの前哲学

ドイツの古典哲学 ライプニッツ 啓蒙主義 ドイツ古典哲学 カント コペルニクス的転回 理論理性の哲学 実践理性の哲学

カントからヘーゲルへ カントの理性主義に対する批判 フィヒテ シェリング ヘーゲル 思弁哲学という理念

現象学による思弁への高まり エンチュクロペディーに示された思弁の内容

 

2005/06/13

『空と創造』 著:塩澤邦彦

1993 リーベル出版 92P

虚数iは二乗すれば-1になるので、四乗すれば1になる。

これは、古代ギリシアや古代インドの空の哲学の変換性とまったく対照的にみることができる、と。

いやはや面白いです。

こういった、西洋思想と東洋思想と自然科学との横断が大好きな人にはたまらないでしょう。

次元が上になるものは、例えば二次元からしたら三次元は消えている存在、という説明も面白い。

滑走路を走るしかない車からしたら、空へ飛んでいく飛行機は、消えるものだ、と。

ただ後半が、創造するためのイメージトレーニングみたいなそんな感じになって、ちょっと微妙な感じに。

推奨度

★★★★

見出し

空と創造の接点 空の源泉 空の哲学 ケノン 虚数 空の座標系 座標変換 次元変換 スーパー次元 創造の座標系 創造の神話

創造に対する二つの解釈 創造への座標変換 創造のプロセス(1)準備段階(2)イメージを生む(3)メモをとる(4)イメージの深化

空の音楽性 創造の儀式 起承転結 時間の表現

 

2005/06/12

『神聖ローマ帝国1495-1806』 著:ピーターH.ウィルスン 訳:山本文彦

2005 岩波書店 133P

シリーズヨーロッパ史入門。

このシリーズは、巻末にある章毎に別れた見やすく豊富な参考文献が本当に便利で素晴らしいです。

史学入門者だけでなく、もうベテランとなったような人にも美味しく利用できるものと思います。

特にこの本は、神聖ローマ帝国という非常に分かりにくくまだ研究もそんなに進んでいないモノを理解するための、

おおまかな枠づけをおこなっているという、今までなされてこなかった難しい試みをきっちり仕上げてくれたという点で、

まさに最良の神聖ローマ帝国に関する一冊。

ただ、この近世〜近代のヨーロッパ史というものをそこそこに理解していることが大前提となっていますし、

記述も全体的に何だかいかにも歴史学の専門書的なところがありますので、

その意味では他のヨーロッパ史入門シリーズよりハードルが一つ高いような気もします。

私はクライスっていうのがよく分かっていなかったので、なかなか勉強になりました。

帝国軍に関する記述も、プロイセンなどとは違って攻撃的でなくあくまで防衛的だということが書かれており、

フランス革命時にプロイセンが撤退したことによりその性格の違いが仇になった、などと、当を得ていて良いです。

推奨度

★★★★

見出し

神聖ローマ帝国はどう説明されてきたか 出発点 さまざまな見解と解釈 帝国政治におけるさまざまな流れ 国制の発展

1495年までの発展 帝国改造の時代 宗派対立期 皇帝の復興と帝国政治の国際化 オーストリアとプロイセンの競合と帝国の崩壊

主要な制度と傾向 皇帝 帝国議会 帝国裁判所 帝国税 帝国防衛 帝国クライス 帝国教会 帝国イタリア 領邦絶対主義

 

2005/06/10

『世界中の言語を楽しく学ぶ』 著:井上孝夫

2004 新潮新書 190P

100を超える言語に手をつけ、そのうちの結構な数をそこそこにこなしているという、

何だか化け物に思えるような凄絶な異業をやってのけている著者。

そうやって摘み食い的にあちらこちらの言語を学ぶのが趣味で途方もなく楽しい、というのだから、

何でもそうですが好きこそ物の上手なれ、ってわけですね。

私はまだ手ぇつけてるのは五つくらいですが、さすがに両手で数え切れないほどにはやろうと思えません。

体験談というか、どういうことをやって学んできたのか、楽しく読めますのでオススメ。

久々にほとんど頭使わず読書したような気がします。

推奨度

★★★★

見出し

アーニャの言葉 第二外国語から始まる ドイツ語もイタリア語も 「四週間双書」 アルバイト代で教材を 初めての原書

言語学科で言語三昧 社会人に時間はないけれど 就職か研究か 片道二時間の通勤を活かす 喫茶店学習法 役に立ったり失敗したり

初めての海外旅行は中国 ひたすら奮闘の十年 トルコで英会話 ウォークマンとシステムノート 忘れてしまう! こま切れ時間こそ命

日本人は多言語学習に向いている 不惑が転機に このままでは…… 文学が読みたい 世界の新聞とホームページ 翻訳にトライ

趣味はほかにも 楽しみは無限に広がる もっと音楽を 芝居も映画も 世界の情報を得る マンガと絵本の世界 言葉の世界旅行

わが実践的学習法 第一習得言語の選び方 文法は味方です 音で覚えよ 電車活用術 文法書と辞書の選び方

 

2005/06/09

『スタンダール、バルザックとイタリア ジーナあるいはイタリア』 著:フィリップ・ベルティエ 訳:小野潮

2002 中央大学人文科学研究所 31P

当代の売れっ子バルザックが、限りなくイタリア的で素晴らしいと絶賛したスタンダール。

彼らの関係と、イタリア性を論じた講演の翻訳ものがこれ。

そのバルザックの思っているイタリア観が、既にしてスタンダールから大きく影響を受けたものなので、

スタンダールを真にイタリア的だと思えるのなんて当然だ、っていうのは笑えました。

推奨度

★★★★

 

2005/06/08

『ヘルマン・ブロッホの『ユリシーズ』論』 著:入野田眞右

2004 中央大学人文科学研究所 34P

ジョイス研究者に無視されがちだというヘルマン・ブロッホ。

後期にはジョイスに対する考えが変わってしまったからなんでしょうか。

20世紀最大級の傑作だと、当時はボロクソに言われていたようなジョイスの『ユリシーズ』を褒めていたようです。

ブロッホも結構ジョイスに似ているから褒めたんじゃないかなぁと勘ぐるだけでは、

彼の『ユリシーズ』評論の的確さは分からないでしょう。

まぁ、結局は似てるから的確にもなれたんでしょうが。

推奨度

★★★★

 

2005/06/07

『ポストモダニズムとホロコーストの否定』

著:ロバート・イーグルストン 訳:増田珠子 解説:イ・ヨンスク

2004 岩波書店 106P

ポストモダンブックス。

本論で良かったものを、解説で駄目にしたようなもの。

このポストモダンブックスシリーズは、大抵解説が素晴らしい小論になっているのですが、

何ていうか、もう、こういう偏見は本来持ちたくないんですが、名前を見てやっぱりなぁ、と思ってしまうような感じ。

誰かこういう偏見を打ち崩してください。

何故に、まったく論理構造が合わないアジアと日本を持ってくるのかなぁ、と不思議でたまりません。

ホロコースト否定論のアホさは、本論でしっかり述べられていますし、

とてつもなく説得力ある調子で締めくくられていますが、それをそう単純に日本に持ってきちゃイカンですよ。

何せ捏造具合が違うでしょう、と。

大躍進やら文化大革命やらヴェトナム進軍やらチベット・ウイグル問題やら、

さらには情報統制しまくりなトコを、ユダヤ人問題と同じ論理で語ろうったってそうはイカンですよ。

……本論は良い内容ですので。

推奨度

★★★★