読書記録
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2005/07/06
『宗教改革とその時代』 著:小泉徹
1996 山川世界史リブレット 90P
狭い意味での宗教改革でなく、ウェストファリア条約あたりまでの広いスパンで論じているもの。
まぁ、ウェストファリア条約で三十年戦争が終わったかというと、そうでもないというのありますが、略。
少ない紙幅ながら、きれいに論点をきっちり押さえてまとめあげていると思います。
宗教改革について通り一遍しか知らない人には是非一読推奨。
この三文に尽きるかと。
「プロテスタンティズムをプロテスタンティズムとして生き残らせたのは、主権国家の出現という世俗的契機であった。
新たな主権国家は自らの正統性を保証する理論的支柱を必要としていたし、
プロテスタントは自分たちを保護する世俗的権威を必要としていた。
両者の利害の一致が、プロテスタンティズムを現在にまで生き残らせたのである」
推奨度
★★★★
大見出し
宗教改革への視点 宗教改革と国際政治 宗教改革の思想的基盤 宗教改革と主権国家 宗教改革と民衆文化
周辺地域での宗教改革 カトリック宗教改革 宗教改革の再評価
2005/07/05
『科学者は神を信じられるか』 著:ジョン・ポーキングホーン 訳:小野寺一清
2001 講談社ブルーバックス 167P
著者はディラックのお弟子さんで、現在は神父さん。
なのでかなり面白い神論を持ってます。
まぁカソリックなんで有神論なわけですが、これは注目に値する有神論だと思います。
詳述はしませんが、一つのポーキングホーン神論を築いているといってもいいんじゃないでしょうか。
御多分にもれず訳者の後書きを最初に読んで、
カソリックから一歩も外に出ていないながら独特な人格神を語っているというようなことが書かれていたので、
念頭にはスピノザの神を置いて読み始めたんですが、結構符合するところが多く興味深いです。
まぁ、スピノザのように主客合一的でなく、あくまで分離したものとしているのが大きな違いとしてあります。
聖書に書いてある科学的なことは科学的に読んでもしょうがない、あれは比喩とか寓意というように読むべきであり、
つまり、神学は神学により解決し、科学は科学により解決するのが最善の策で、
その両者間が喧嘩する理由なんて別にありゃしないんですよ諸君、っていうのが簡潔なまとめ。
そんなこんなで基本的にはなるほどと納得して読めていけたのですが、
最後の方の、奇跡やら復活に関しては、私には無理でした。
復活こそがキリスト教の真髄である、と著者が言っていますが、その通りで、それだからこそ、
私はキリスト教をどうしても好きになれないのでしょう。
うーん、難しい。
推奨度
★★★★★
見出し
論より証拠? 宗教は個々人の幻想ではない 科学は世界の成り立ちを追究する学問と言い切れるか 光への飛躍
宗教と科学の共通点と相違点 世界を理解するには科学と宗教の両方が必要だ 世界は驚きに満ちている
宗教は科学に深い影響を与えてきた 創造主である神はいるのか 神の存在を知らせる二つの方法 科学的な問いには科学的な答えを
美しい方程式 我々が住んでいる特別な宇宙 「人間原理」という考え方へ 「人間原理」から宗教的領域へ
この宇宙では何が起こってきたか 神のいる場所 偶然と必然が織りなす宇宙の進化 「偶然」は自由の徴 「自由」がもたらした苦悩
キリストは世界の苦悩を理解する 「希望」は精巧な神の意志のなかにある そもそも我々は何者なのか? 還元主義者VS,反還元主義者
「意識」の発生 量子力学の不思議 バタフライ効果 世界は、ぼんやりと雲に囲まれている 神が与えた合理的秩序への洞察
科学者は祈ることができるか 「祈る」ことの意味 神の存在する場所はないのか? 物理的世界の精妙さ 認識論は存在論を規定する
トップ・ダウンの因果律 「ギャップの神」の存在 「祈り」は人間の意志と神の意志のコヒーレントな関係 奇跡をどう考えるか
キリスト教の中核にある「復活」 復活は深いレベルの連続性 復活の証明 ひとつの終末論 宇宙の終焉と「希望の神」
肉体を構成する物質は日々入れ替わっている 新しく来るべき世界と復活 「何が起こるかを見ようじゃないか」
科学において信じることの意味 科学と宗教の共通した思考過程
2005/07/04
『反歴史論』 著:宇野邦一
2003 せりか書房 259P
竜頭蛇尾に終わっている感が全開。
歴史について語らんとするのに、
参考文献に歴史学系の著作が一冊も無いどころか、歴史学者の名前が全く挙がっていない。
かろうじてブルクハルトの名前が一度だけ出たけれど、名前の羅列のところで挙がったに過ぎません。
試みと意気込みは買いたい、しかし……、といった感じです。
歴史の定義づけもなされていないので、文脈・段落・章によってコロコロと内実が変転し、
そのことを意識していないとかなり混乱させられることと思います。
まぁ、面白いかどうかと問われると、部分的に面白かったり、そもそも哲学好きならまぁ楽しめるのですが、
図書分類法で歴史学のところに置かれちゃ困りますよ、と。
また、ページ数が半分程度ならまだしも、この分量を読んだのにコレじゃあ、という気持ちも。
惜しい一冊だとは思います、是非また機会を改めて準備を万端にしてからこの試みに挑戦して欲しいものです。
ちなみに、一番面白いと思ったのは、最後の方の、三木清の歴史哲学。
推奨度
★★★
見出し
反歴史との対話 歴史の恥辱 小林秀雄と「反歴史的概念」 さまざまな歴史の歴史 人類学と引き裂かれた意識 自然と構造
歴史のパラドクス イエスを反復する 強い歴史、弱い歴史 歴史の欠乏と過剰 無意識・映画・存在論─思考しえぬものの思考の準備
思考を脅かすものについて 思考の異物? 哲学の批評 小林秀雄と映画 純粋な起源との親密性 冥界の小林秀雄に
精神分析と存在論のあいだ 自然は対象化されない、あるいはマルクス 存在論と自然とテクネー 無意識と対象化
イメージ空間について 映画の両義性とベンヤミン シュルレアリスムとファシズム 幸福あるいは消尽 アルチュセールの異化
弁証法と至高性 終焉と「到来しないもの」 歴史のカタストロフ 歴史を引き裂く時間 歴史が「繋留」であることについて
歴史のカタストロフィックな経験 自同性は構成されなければならない
2005/07/03
『歴史とは何か』 著:E.H.カー 訳:清水幾太郎
1962 岩波新書 252P
講演モノ。
時代が時代ですので、ある種の制約性は免れていませんが、
それでもカーは相当に卓越した眼識を有しているものだと思います。
一つの歴史学の完成をここに見ることができると云ってもいいくらい。
もちろん、カーの云う歴史の“進歩”と同様に、歴史学も同じく進歩するもので、新たな視座が増えている現在、
カーの歴史哲学を批判継承していくのが良しかと。
歴史学入門の古典的名著ですね。
後、彼のバーリンに対する批判は、本文中しばしば出てくるものなのですが、
歴史家や思想家も上述同様に変転していくものなので、後期バーリンには通用しなかったりします。
絶対に忘れてはならない要点は、次の一文でしょう。
「歴史家が研究を託されているのは、行為の背後に潜んでいるものですが、
それと、行為する個人の意識的な思想や動機とは全く関係がないかも知れないのです」
推奨度
★★★★★
見出し
歴史家と事実 事実尊重の時代 歴史的事実とは何か 歴史的事実が生まれる過程 無智の必要について 文書が語るもの
19世紀の歴史観 歴史家が歴史を作る 先ず歴史家を研究せよ 想像的理解の必要 現在の眼を通して見る
懐疑主義とプラグマティズム 歴史家の仕事ぶり 歴史的事実と歴史家 社会と個人 社会を離れた個人はいない 個人崇拝の時代
過去は現在を通して 保守主義者ネーミア 時代の流れと歴史家 歴史の産物としての歴史家 歴史研究の対象 個人の行動をどう扱うか
歴史における数の重要性 人間の行動が生む不測の結果 叛逆者をどう見るか 偉人をどう見るか 歴史と科学と道徳
歴史は科学であること 歴史における法則の観念 道具としての仮説 科学と歴史との間 一般化の意味 歴史と社会学の関係
歴史の教訓について 未来に対する予言 歴史研究の主体と客体 物理学的世界との類似 歴史における神について
歴史家は裁判官ではない 道徳的判断の規準 死骸の山を越えて 超歴史的な価値があるか 価値の歴史的被制約性 もっと科学的に
歴史における因果関係 歴史の研究は原因の研究 原因の多様化と単純化 ポッパーとバーリン 自由意志と決定論
思想上の「未練」学派 クレオパトラの鼻 歴史における偶然とは何か ロビンソンの死 現実的なものと合理的なもの 進歩としての歴史
過去に対する建設的な見解 歴史における進歩の概念 生物的進化と社会的進歩 歴史の終りということ 進歩と非連続性
獲得された資産の伝達 歴史における方向感覚 過去と未来との対話 「存在」と「当為」 「最も役に立つもの」 真理の二重性
広がる地平線 現代の新しさ 自己意識の発展 ヘーゲルとマルクス フロイトの重要性 現代の歴史的転換 理性の役割の拡大
理性の濫用をめぐって 世界的バランスの変化 地平線は広がる 孤立するものは誰か それでも─それは動く
2005/07/01
『哲学的クロニクル』 著:ジャン=リュック・ナンシー 訳:大西雅一郎
2005 現代企画室 141P
相変わらずまとまりが無いですよナンシー。
タイトルの通り断片を、ラジオで語ったものです。
なので、比較的分かりやすい章もありますが……。
分かったような分からないような分かったようなで結局何なのか分からず終い。
それがナンシークォリティ。
推奨度
★★★
2005/06/29
『比較史の方法』 著:マルク・ブロック 訳:高橋清徳
1978 創文社 129P
本文よりも解説の方が素晴らしいという面白い一冊。
本分は適当に読み流して、解説を熟読するというのでも何ら問題ありません。
マルク・ブロックの簡単な紹介は勿論のことながら、
アナール学派に関する考察が結構詳細に載っていまして、これが非常に秀逸です。
簡潔にまとめた一文引用。
「歴史は、この長期の持続性およびその深い力に支えられており、
そのようなものの実現の場としての「社会」こそが歴史の決定的過程とみなされねばならない。」
推奨度
★★★★
2005/06/27
『比較文明と歴史哲学』 著:神山四郎
1995 刀水書房 257P
もうこの現在、国際化されていく中で、いい加減比較文化ではなく、比較文明を語ろうじゃないか、という主張。
その初期の歴史哲学の中で、ヴィーコが語られるのは当然のことなんですが、
まさかイブン=ハルドゥーンを持ち出されるとは目から鱗でした。
すっかり頭から抜け落ちていた存在で、本当ビックリ。
まぁ、そこまで検討できるほどまだまだ器用ではないので、とりあえずハルドゥーンについては保留ですが。
梅棹忠夫氏への評価と、福沢諭吉論も面白かったです。
比較文明論の研究についての手引きということは勿論ながらに、歴史哲学の入門概説としても非常に重宝します。
ちなみに、ヴィーコの歴史の螺旋進行論は必見でしょう。
私も独自に同じ結論に辿り着いていたから推してるんですが。
それと、ヘルダーについての考察と知見は不足しているものと思いました。
後は、今現在では通用しないことも、出版年からすればしかたないのですが、あります。
例えば、一極構造的な力の偏向が無くなっている、というくだりとか。
あめりかんぱわ〜がこんなになるとは、思いもよらなかったのでしょう。
推奨度
★★★★★
見出し
歴史哲学と比較文明の関係 歴史哲学と比較文明への道案内─歴史の見方の違いをめぐって 文明と歴史の哲学
歴史哲学と比較文明の誕生 歴史の縦列的な見方と横断的な見方 歴史哲学と比較文明の交差点─ボシュエとヴォルテールの衝突
ヴォルテールの歴史哲学の構想 ボシュエの世界史論の構想 二人の対決から比較文明が生まれる
「新科学」が発見した歴史のサイクル─デカルトとヴィコの二つの科学 デカルトの科学とヴィコの科学 ヴィコとその時代
ヴィコの意図するもの 「確実」の認識と「真」の認識 歴史の三時代のサイクル 歴史の進歩はスパイラルに
砂漠の夜に輝く一つの星─イブン・ハルドゥーンの『歴史序説』から ヨーロッパ中心史観の衰退 トインビーの歴史を見る目
イブン・ハルドゥーンの生涯とその時代 『歴史序説』の成立 西欧の社会科学に先駆ける ベドウィンの生活様式 暗夜に輝く一つの星
道徳的人間史か高等自然史か─カントとヘルダーの論争が残したもの 啓蒙思想とロマン主義 自然と人間の共生再考
ナショナル・ヒストリー全盛の陰にひっそりと─文化有機体説の成立 リュッケルトの有機体文化史 揺るぎないヨーロッパ文化の優越感
ダニレフスキーの文化的汎スラブ主義のなかに ラソーの有機体的・ロゴス的歴史哲学 ロマン主義の花から
「近代の終末」の先に見えるもの─四人の思想家が何を見たか レーヴィットの見た実存的「近代の終末」
ヤスパースがとらえた人類史の中軸時代 グワルディーニの見た「近代の終焉」と宗教への道 日本で比較文明の扉をひらいた山本新
インター・カルチャーからトランス・カルチャーへ 文化と文明の間柄─産業革命が生んだ二人の子 進歩の頂点としての「文明」
文明のもたらす功罪 構造主義の大きな貢献 文明論のさまざまな模索─脱西洋化はできるか 「文化」と「文明」の定義
文化と文明の同定と背反 弁証法と挑戦・応戦理論の果たす役割 全体論の弱みと強み 脱西洋化が今できるか
生態史観でユーラシア大陸の文明を見ると─西欧と日本の歴史の並行性 梅棹忠夫氏の『文明の生態史観』の意義
西欧と日本の歴史は並行している 日本の歴史の速い近代化の謎が解ける 福沢諭吉の文明論・再考
21世紀の文明変動と文明理論─「世界文明システム」理論の形成 ロシアに「ユーラシア共同体文明」ができるか
ハンチントンの見た西欧対非西欧の文明衝突 「世界文明システム」理論の形成へ
2005/06/25
『英語の意訳とはなにか』 著:小川智時
1998 中央公論社 166P
チョムスキーの生成文法理論なんかをもとに、英語の深い意訳を考えていこうというもの。
色々と有名英文を引っ張ってきて、それの名訳を紹介し、面白いです。
ただ、これは名訳か?
と疑わしくなるものも。
権威に負けて名訳と云ってるのか、名訳と勘違いしてるのか、とか思ってしまいましたり。
フォニックス理論の解説もごく簡単に載ってましたが、簡単すぎて分かりにくいと思います。
推奨度
★★★★
大見出し
意訳とはなにか 偉人英語のアラビアン・ナイト─専門家の意訳の七つの具体例の検討 意訳と変形生成文法、談話文法
意訳と情報構造と有標構文の具体例 翻訳の技法への入門ABC─日本語と英語の表現構造の相違
固有名詞の読み方─フォニックス理論への入門
2005/06/23
『差異について』 著:ジル・ドゥルーズ 訳・解題:平井啓之
1989 青土社 169P
ヘルダーとのつながりを直観的にベルクソンに見て、ドゥルーズの有名なベルクソン論を手にとってみる。
正解。
こう、ピキーンッと自分の中で閃いてカチリとパズルができあがると、何とも云えぬ高揚感が。
原著だと30ページくらいだそうですが、本著では文字が大きく字間も広く、ページを贅沢に使っています。
まぁ、そのぶん読みやすくて良いです。
ドゥルーズやるにしてもベルクソンやるにしても、はずせない一冊だと思いますよ。
推奨度
★★★★
2005/06/21
『北方の博士J・G・ハーマン』 著:I・バーリン 訳:奥波一秀
1996 みすず書房 196P
ヘルダーよりもっと知られていない、最強の反啓蒙主義者。
バーリンは、もっと彼について語ってくれても良いと思うのですが。
貴重な卓見を墓場まで持ってかれちゃ勿体ない。
バーリンの散文的な論文を寄せ集めて、彼自身の協力も得て編集されたものを翻訳したのが本著。
とても読みやすく、優れモノです。
ある意味で、カント以上に後々に影響を与えているのがハーマンだとバーリンは述べてます。
その超破壊的な姿は、何となくニーチェを思わせますが、
一面ニーチェよりも破壊的で、一面ニーチェとは比ぶべくもないほどに保守的。
色々な意味で八面六臂なのがハーマンです。
あることをつらつらと書き連ねているかと思ったら、突然に突飛な結論を出してくるというのが彼の特徴。
うねうねした水脈を辿っていたら、目的地でもない大海に出るといった感じ。
何かその点においては、非常に私の思考回路と似ている気がしてなりません。
啓蒙主義の裏側、またはヘルダーやヤーコビやゲーテをより知りたいのなら、ハーマンは欠かせません。
推奨度
★★★★★
大見出し
序説 生涯 核心 啓蒙 認識 言語 創造的天才 政治 結論 補遺