読書記録

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2005/07/30

『歴史のための闘い』 著:ルシアン・フェーヴル

1995 平凡社ライブラリー 224P

マルク・ブロックとともに、事実上“アナール派”の創始者となった著者の“歴史哲学”を知るに適した恰好の一冊。

訳も優れて読みやすく、解説も申し分なく、文句ない名著です。

基本的に講演モノなので、原文自体が難文でないのでしょう。

トインビーに対する批判だけは、不当なものと感じざるを得ないですが。

それを差し引いても、伝統的歴史学に対する真の“歴史”のためのCombats理念を持っていたフェーヴルは、

素敵に不敵なカッコイイヤツです。

「定義というものはすべて牢獄であり、学問は人間と同様に自由を必要とするからである」

「歴史家であることは、反対に絶対に諦めないこと、情報の空白を埋めるためにすべてを試みること、

大げさにいえば発明工夫することである」

推奨度

★★★★★

大見出し

歴史と歴史家の反省─1892-1933 歴史を生きる─歴史学入門 嵐に抗して─新しい『年報(アナール)』のマニフェスト

シュペングラーからトインビーへ─二つの日和見主義的歴史哲学 マルク・ブロックとストラスブール─ある偉大な歴史の思い出

新しい歴史へ向かって

 

2005/07/28

『自我の哲学史』 著:酒井潔

2005 講談社現代新書 254P

私の中では自我問題についてはそれなりに決着がついているので、

それを自我思想史の中でどのあたりに位置づけるべきかというようなことを考えて読み始めました。

西洋の自我思想の方は、ただ単になるほどなかなか分かり易く的を射て書かれている、

別に自我思想史として読まずとも、特にライプニッツなんかはとても良い入門書になる、と思って読んでいたのですが。

日本に移って印象がガラリと変化。

宮沢賢治の自我思想について「ほぅ、なるほど、とても日本的」と納得感心して読み終え、

また難解なんだろうなぁと期待せず西田幾多郎の章を読み始めたところ。

「…………ぉぉぉおぉぉぉおおぉおおぉおぉっ!?」

西田哲学が頭の中に入ってくる!!

宮沢賢治の心象スケッチによる哲学を通じて西田に至ると、斯様に理解しやすくなるものかと、驚天動地でした。

初めて西田思想が自分の中に息づいた瞬間です。

言ってることは何となく分かるような気がするんだけど何だかなぁぁぁぁ、といったイメージだったのが、

「そうか、そういうことかッ!!」と結実されました。

その後の章、夏目漱石を読んだ後に、また西田の章を読んで、更に理解納得できることできること。

とにかく、西洋哲学の入門書としての役割を果たせるどころか、何よりも宮沢賢治-西田幾多郎-夏目漱石と、

これを自我思想を軸として一本に考え納得することができるという点において、最上級の好著です。

時を経れば経るごとに、好著・名著の類が増えて幸せです。

悪く云えば、好敵手がどんどん増えていくということなのですが。

「前章でわれわれは、宮沢賢治における非実体的で、それゆえ非連続的、非同一的な自我の概念をみたが、

西田の言う「無の場所」の自我も、内容的にはそれと軌を同じくする。

賢治が「心象スケッチ」によって奔放に自由に描いたその同じ自我(「因果交流電燈」)を、

西田は哲学者として哲学の述語を用いて表現しようとしたともいえよう」

推奨度

★★★★★

大見出し

「自分のことは自分が一番よくわかる」ってホント? 西洋近世哲学における自我 「自我」概念の内実 デカルトからカントへ

ライプニッツの自我論 意志としての自我へ─キルケゴールとニーチェ 20世紀大衆社会の中の自我─ヤスパースとハイデッガー

現代哲学と自我─ブーバーとレヴィナス 自我のゆくえ 宮沢賢治の自我論 西田哲学の自我論─我は我ならずして我なり

夏目漱石の自我論 16世紀南西フランスで起きた偽者事件 日本人と自我のゆくえ 仮面の自我、あるいは着脱する仮面

 

2005/07/27

『フランス語早わかり』 著:猪狩廣志

1992 三修社 154P

フランス語単語の発話法則をとにかくマスターしたい、という気持ちで、音読しながら通読。

……イタリア語のように、甘くはないです。

これから何冊か通読して、頑張っていきたいと思います。

っていうか、母音種類16って、泣けてきますが。

振り仮名ふってあって、メモのような書き込みがあって、分かり易い本です。

推奨度

★★★★

 

2005/07/26

『ヨーロッパの民族学』 著:ジャン・キュイズニエ 訳:樋口淳/野村訓子/諸岡保江

1994 白水社文庫クセジュ 138P

歴史学の方面からばかりでなく、それに影響を与えてきた民族学の輪郭も掴まなければ、

ということで手に取ってみました。

うーむ、ますます歴史学と民族学と社会学と言語学の輪郭がぼやけてしまいました。

もう、いいじゃん、別に、地歴言語綜合考察学、とかいう名前にしちゃえば。

そんな気持ちです。

一つ云えることは、

カテゴライズは利便性をはかるためのものだと考えていますので、その枠に囚われるのは愚にも付かぬことですね。

えー、民族学について、今後の展望、期待を含め、よくまとまってます。

推奨度

★★★★

見出し

ヨーロッパ民族学の歴史 差異を記述する さまざまなイデオロギー 遺産の古層・基層・傍層 インド・ヨーロッパの基層

遺産の継承、同化、確信 古代ギリシア・ローマ文明からの敬称 「蛮族」からの敬称 アイデンティティの危機

ヨーロッパ人のなかのヨーロッパ人 他者のなかのヨーロッパ人 ヨーロッパのヨーロッパ人と外国人 好みと価値観と信仰

食物の好みと結婚の選択 世界の呪縛と覚醒

 

2005/07/25

『「新しい歴史学」とは何か アナール派から学ぶもの』 著:福井憲彦

1995 講談社学術文庫 301P

表題の通りに、「新しい歴史学」を深く徹底的に考察してこれこれこういうものだ、と結論を出す、

というわけではないです。

アナールの手法をトレースして、こういうやり方をとったりするのが現在の“新しい”歴史学ですよ、

というような紹介形式ですね。

それ故に話題が多岐に渡って、時折ついていけなくなることもありましょうが、

まぁ大抵は面白く読めることかと思います。

推奨度

★★★★

見出し

「新しい歴史学」を考える 「日常性」と近代の権力秩序 近代における文化の諸相 「監獄の時代」としての近代 フォークロアのまなざし

歴史とフォークロア ミレーの「洗濯女」から 死と生の歴史学 クリオとタナトス─死の歴史学 家族の多様性─フランスの家族史から

都市空間と民衆行動 ポリエードルとしての年 19世紀の都市と民衆 労働大衆と消費文化─聖飢魔Uからベル・エポック

 

2005/07/23

『今、読み解く 佐藤一斎の 重職心得箇条』 著:萩原裕雄

2001 コアラブックス 135P

佐藤一斎の『言志四録』は前に少し読んで感心したものでしたが、

この『重職心得箇条』もまた良いですね。

某前害務省のT氏に渡したというあたり、

某首相はユーモアセンスだけは誰しもが認めるレヴェルにあるものだと思います。

日本人たるもの、日本思想にも精通していかないとなりませんね。

っていうか、せっかく日本語がマスターレヴェルにあるのだから、それを利とせねば、

西洋思想家と肩は並べることができようとも頭一つ抜けることはできないでしょうね。

無謀ながらも井筒俊彦氏クラスを目指して日々精進。

「さて、構造改革を推進するために『米百俵』を例に出すことは、けっこうなことである。

しかし、国民に対して「忍耐・我慢」の枕詞として利用するのは、筋違いのように思えてならない。

これは官僚や役人らが自らの給料を減らして、その予算を教育費に割り当てようという逸話なのである」

推奨度

★★★★★

見出し

佐藤一斎の『重職心得箇条』を読む 学んで聖人に近づく 世の中を変革した門人たち 佐藤一斎と『重職心得箇条』について

第一条・威厳を養うべし 第二条・愛憎の私心を捨て用いる 第三条・伝統と規則は別もの 第四条・先例を先例にするな

第五条・機に応じて対策を施す 第六条・物事は全体から眺める 第七条・重職の資質を問う 第八条・雑務は部下に任せよ

第九条・報償の権限 第一〇条・優先順位を見誤るな 第一一条・相手を受け入れる寛容さ 第一二条・間違いを受け入れる態度

第一三条・万遍なく意見を聞く 第一四条・不必要なものは省け 第一五条・組織は上から腐る 第一六条・情報公開をせよ

第一七条・人心一新

佐藤一斎・その他の重職心得 佐藤一斎の著述 言志録五一条・大臣の決断するとき

言志後録一三条・部下の上手な使い方 一四条・完了に必要な心掛け

言志晩録一三六条・重職はあまり細かくなるな 一五二条・失敗は慣れから起きる 一八〇条・小さな欲には誘われ易い

二三六条・後任に道を譲れ

言志耋録二四条・志を忘れるな 一二四条・世に処する方法 一二五条・実践して人を導く 二一一条・批判も利益のうち

二六二条・優秀な者は味方に取り込め 二六四条・公私の区別をはっきり 二七八条・国民の好むことをやれ

小林虎三郎の『米百俵』 『米百俵』ブーム 戦時下に書かれたシナリオ 小林虎三郎とは何者か 時代を先取りした改革

虎三郎の復興事業 逸材がごろごろ 山本有三と米百俵

 

2005/07/22

『一目でわかるコードの知識』 著:小林一夫

2005 中央アート出版社 148P

音楽のコードに関する諸々の情報が、分かり易く図柄つきで載ってます。

いや本当に複雑だなと思うばかりです。

……思うだけでなく、少しずつ勉強して覚えて使えるようになりませんと、ね。

推奨度

★★★★★

 

2005/07/21

『ヘーゲルの歴史意識』 著:長谷川宏

1998 講談社学術文庫 217P

原著は1974年刊。

全然手をつけていないらしいです。

当時としては画期的なほどに容易な文体として出されたヘーゲル本ですが、

31年も経った今となっては、普通な感じです。

それでも、即自だとかのヘーゲル用語が無いので読みやすいことは確かですが。

タイトルについては、最終章で結論として語られていて、前置きが長すぎるきらいがあります。

白状すると著者の本を読むのは実は初めてだったりします。

ヘーゲルの訳本は読んだのですが。

現代新書のものでもそのうち読んでみようかと思います。

推奨度

★★★★

大見出し

啓蒙的理性の克服 主観道徳から運命の必然へ 国家の現実性 フランス革命と自由 古代ギリシャ共和国─憧憬から歴史的把握へ

歴史意識の帰趨

 

2005/07/20

『生きることを学ぶ、終に』 著:ジャック・デリダ 訳:鵜飼哲

2005 みすず書房 77P

結果的に、デリダ最後の著作となったもの。

インタヴュワーによる対話形式なので、とても読みやすいです。

「あれ、デリダ?」

っていうくらいに。

語ってることはやっぱりデリダなので、すぐ分かると思いますが。

入門書としておすすめしたいですが、デリダがどういう思想家か知っておかないと意味不明だったりしますので、

読む時期が難しいかもしれません。

デリダ本人の本としてあたるのは、初めのうちがいいかと思います。

最後の方の語りは、かなり感動的でもあります。

うーん、本当に亡くなってしまったんですね、デリダ……。

推奨度

★★★★

 

2005/07/19

『ヴェーバー、トレルチ、マイネッケ ある知的交流』 著:西村貞二

1988 中公新書 190P

そもそもトレルチやマイネッケに関する平易な一般書籍が数少ないので、それを読めるだけでもお得感たっぷり。

しかも、よく知られているヴェーバーとの対照から見ていくということで、非常に分かり易くて良いです。

書き出した見出しに眼を通せば、大体の内容は推測されると思いますが、

興味深いのはやはりマイネッケの歴史哲学ですね。

ちょっとまだ手を出さないでおきますが、今やってる研究が済んだらソッチにも視野を広げてみようかと。

推奨度

★★★★★

見出し

トレルチとの出会い ルネサンスから宗教改革へ トレルチ研究の三つの方向 政治評論家としてのトレルチ マイネッケとの出会い

西ドイツ史学界のマイネッケ評価 世界有数のヴェーバー研究国、日本 ヴェーバーのカリスマ性 三巨匠の生涯 マックス・ヴェーバー

ヴェーバーの家庭 前途有為の青年学者 フライブルク教授時代 ハイデルベルク大学へ 多彩なヴェーバー=クライス

第一次大戦おこる ドイツ革命後 エルンスト・トレルチ 不分明なトレルチ伝 家庭環境 ゲッティンゲン小教授団の形成 神学会の革命児

ハイデルベルクにおける交友 ベルリン大学哲学部へ 政治活動と政治的考察 フリードリヒ・マイネッケ マイネッケの『自伝』 三重体験

新進歴史家の課題 シュトラスブルクの日々 フライブルク大学 理念史第一作 マイネッケの戦争観 戦中・戦後の業績

ナチスとのたたかい フライブルク、ハイデルベルク、ベルリンで 三つの都市 大学と教授の地位 ヴェーバーとフライブルク

マイネッケとフライブルク ヴェーバーとマイネッケのつながり マイネッケとトレルチの交渉 ヴェーバーとトレルチの交渉

優先説はただしいか 研究協力の結実 ヴェーバーの動静 トレルチのヴェーバー追悼 マイネッケのヴェーバー追悼

マイネッケのトレルチ追悼 マイネッケの追悼者 『プロテスタンティズムの倫理』をめぐって 宗教史学の要諦 宗教社会学への傾斜

本書の最中心問題 トレルチとヴェーバーのプロテスタンティズム研究 「資本主義の精神」論争 両者の一致点と相違点

トレルチはヴェーバーになにを負うか カルヴィニストとルター主義者 トレルチの悲痛な望み 歴史主義の真髄 歴史主義とはなにか

なぜドイツが歴史主義の祖国となったか 『歴史主義』第一巻 歴史主義の危機はどこにあるか 未完の文化的総合 マイネッケの危機感

ヘラクレイトスとアルキメデス トレルチへの不満 マイネッケの『歴史主義の成立』 自然法と歴史主義 危機克服の三つの方法

マイネッケにたいする批判 ヴェーバーと発展思想 ヴェーバーのマイネッケ批判 理念型の創出 歴史学と類型学 ドイツと西欧

近代ドイツ精神史の明暗 政治的不幸の由来 トレルチのドイツ精神論 イギリス・フランスとの対比 マイネッケの「ドイツの自由」

ドイツの自由の限界と特色 ドイツの自己革新 マンの『非政治的考察』 ヨーロッパ文化の生命統一体 第二次大戦後のマイネッケ

「1914年の理念」 ヴェーバーのドイツ観 ルターおよびカルヴァンの職業思想 ヨーロッパと列強の関係 政治と倫理のはざま

三人における「政治と倫理」 古代ギリシアにおける「政治と倫理」 中世における教会の権勢 近代的君主の出現と権力闘争の開始

国家理性の発展 『職業としての政治』の背景 政治と倫理との峻別 心情倫理と責任倫理 権力のデーモン マイネッケの感想

トレルチにおける「政治と倫理」 政治と倫理・宗教との対立 妥協の信奉者 ヴェーバーの非妥協論 マイネッケの『国家理性の理念』

マキアヴェリズムは克服できるか マイネッケの悲劇