読書記録

18

 

 

 

 

 

 

 

2005/09/23

『楽天主義』 著:ヘレン・ケラー 監訳:岡文正

2005 イーハトーヴフロンティア 97P

ヘレン23歳の時の処女作。

悲しいことにやっぱりショーペンハウエルは誤解されてますが。

見方が狭い部分もありますが、若くしてなかなか大した論を持っています。

しかし、それを彼女が障碍を持ちながらも書いたということに対しては別段尊敬するわけでもありません。

彼女が障碍を持ち得たからこそ到達した透徹した視座なのであるかもしれませんが、

それでも、彼女が周囲の人々を含めた彼女であるからこそ書けたものでありましょう。

故に、障碍者でさえこのように立派なことを書けるのだから、いわんや健常者をや、

などとは決して云ってはならないことです。

そう思って読み終え、後書きを見ると、丁度そんなことが書かれていました……。

最後の訳者の後書きで大脱力。

推奨度

★★★★

見出し

私の楽天思想 私の幸福 思想の輝き 現実に立つ 善の世界 働く喜び 信じること 楽天主義の世界 哲学との出会い 心の支え

神の世界で 楽天主義の根拠 教育の進歩 寛容の精神 楽天主義の実践 厭世主義者 楽天主義の力 楽天主義の文学

神からの贈り物 光明を招く キリストの福音 未来への確信 私の信条

 

2005/09/23

『ディドロの<現代性>』 著:中川久定

1986 河合文化教育研究所 76P

河合ブックレット。

ディドロを18世紀啓蒙の時代に於いて一線画した高度な思想家としている点には異論無いですが、

それをディドロ唯一人と局限してしまうのは視野に狭いものと思いました。

河合塾主催の公開講義のようで、読みやすくはありますが、やっぱり内容は深くありません。

ディドロについては『百科全書』の人、くらいしか印象に無い場合は読んでみるのがいいと思います。

推奨度

★★★★

見出し

ディドロの18世紀的新しさ─広がりと深さ ディドロ没後200年 祝うことの意味 ディドロの知の広がり 『ダランベールの夢』

私の読み違い クレメール演出の芝居 日本語とフランス語 翻訳の歪みの原因 蜜蜂の群れの話・蜘蛛の巣の話 ディドロの知の深み

生きているディドロ 抑圧されたものの復権 ディドロの精神 秩序を課すること 秩序の転倒 タヒチ 日本 女性・私生児・子ども・動物

非理性(狂気) 身体障害者・夢 <絶対的転倒> ディドロの共感 イエス・キリストの影

 

2005/09/22

『科学哲学』 著:ドミニック・ルクール 訳:沢崎壮宏/竹中利彦/三宅岳史

2005 白水社文庫クセジュ 164P

エピステモロジーと科学哲学の厳密な区分けは、何だかんだで微妙なところ。

科学哲学と科学的哲学のそれもまた然り。

ピアジェもこの系譜に記されるというところに少し感嘆。

深い内容には全然突っ込まれていませんが、

用語が特殊だったりして完全な入門者には少し難しいかもしれません。

しかしアウトラインを知るには恰好の書といえましょう。

推奨度

★★★★

見出し

哲学のなかの諸科学 科学哲学の始まり 「エピステモロジー」という語 征服する哲学─オーギュスト・コント

危機の哲学─エルンスト・マッハ 科学的哲学? 論理実証主義に反対するウィトゲンシュタイン─誤解

アメリカのウィーン─カルナップからクワイン 帰納の問題 予言から投射へ─グッドマン 認識論の自然化? 科学哲学から思考の哲学へ

科学の論理学か、方法論か? 洗練された方法論─ラカトシュ 告発された方法論─ファイヤアーベント

歴史的要請─ハンソンとトゥールミン クーンと社会学的試み フランスの伝統 発生的認識論─ジャン・ピアジェ

生物学の哲学と生物哲学 二つの伝統が遭遇する可能性 諸科学のなかの哲学

 

2005/09/19

『人間機械論』 著:ド・ラ・メトリ 訳:杉捷夫

1932 岩波文庫 132P

あちらこちらで引っ張ってこられる有名な物心一元論な唯物論思索を医学的立場から語った書。

もちろん、最新現代医学からすれば鼻で嗤うようなところもあるのですが、

そんなことで全否定ができるほど甘くはないのが本著です。

まぁ、分子生物学の立場として、ジャック・モノーが機械論を唱えていますしね。

それはそれとして、その機械論だけで有名なわけですが、

それ以外にも汲むべきところがたくさんあるものだと思うのですよ。

大概、入門書の弊として挙げられるものが、コレですね、全てを汲み尽くせない。

訳でも何でもまずはその人の書いたものに当たってみることというのは、基本的な立脚点なわけです。

そんなことを改めて強く思いました。

「数多の経験によって、宗教には必ずしも厳密な誠実さを要しない、と言いうるごとく、

同じ理由が無神論が必ずしもその誠実さを排除するものではないと考えることを許すのである」

推奨度

★★★★

 

2005/09/18

『偶然性と運命』 著:木田元

2001 岩波新書 204P

体系だってまとまった一冊というよりは、四つのエッセイを収録したものだと思って読んで下さい、とのことです。

実際その通りだと思います。

基本としてハイデガーの時間論を軽く解説したりしているので、木田さんの著書入門としても便利なものかと。

その他、九鬼周造を強く推していたりしますね、私もついこの前“インターネット書架”に公開しましたが、

九鬼周造ほど日本で偶然と運命を研究し尽くした人はいないでしょう。

まだまだ全然触れていないので、折を見て読んでいきたいものです。

最終章でドストエフスキーの『悪霊』『カラマーゾフ』を取り上げています。

偶然の、出遇いを強調する例として挙げられているのですが、

確かにこのドストエフスキーの作品というのは、その出遇いの強烈な印象というのが大きいものとしてありますね。

推奨度

★★★★

大見出し

めぐり逢いの現象学 偶然性の概念 <運命>の思想史 二つの出逢い

 

2005/09/15

『確率の哲学的試論』 著:ラプラス 訳:内井惣七

1997 岩波文庫 287P

悪魔悪魔で有名なラプラス。

著名なわりに、読まれていない気がしてなりません。

中学生の頃読んだのですが、入り用になったので本棚から引っ張り出して再読。

やっぱり俗っぽい人だという印象。

一般的に、ラプラスのイメージって、スウェーデンボルグのような神秘的なものが強いのではないかなと思います。

決定論的な世界観で、悪魔論とか何とか、そんなことばかり流布していますので、

神秘主義者なのかと思われがちなのでしょうか。

実のところ、とっても世渡り上手で、

自分のとるべき行動を確率論で分析して美味しいトコどりしていった人ですからね。

見出しの通り、賭け事とか政治とか色んなことに確率論を応用させています。

「視覚に錯覚があるように精神にも錯覚がある。

 そして、さわってみて目の錯覚が正されるように、反省と計算によって精神の錯覚も正される」

推奨度

★★★★

大見出し

確率について 確率計算の一般原理 期待値について 確率計算における解析的方法について 確率計算の応用 運のゲームについて

等しいと想定されている確率の間に存在しうる未知の不等性について 事象が際限なくくり返されることから生じる確率法則について

現象および現象の原因に関する研究に対する確率計算の応用 多数の観察結果から選ばれるべき平均値について

死亡表と、生命、結婚および諸種の平均値について 事象の確率に依存する利益について 議会による選択と決定

確率の見積りにおける錯覚について 確実さに近づくさまざまな方法について 確率計算に関する歴史的注記

 

2005/09/14

『科学の哲学』 著:柳瀬睦男

1984 岩波新書 195P

本当にごくごく基礎的なところしか書かれていません、というのも、

上智大学で行われた「科学基礎論」という通年講義を原稿におこしたものが基本となっているらしいからでしょう。

そんな基礎論の講義で難しいこと言われても困りますしね。

読んでいて当たり前のことだと思い続けるのは退屈で無為なことと思う向きもありますが、

常に新鮮さと驚きを求めてばかりでは得られないものが、そこにはあるものと思います。

あぁ、当たり前じゃん、そう思うことも時に大事。

次に読んだときも、そう思えるって保証なんて無いんですからね。

推奨度

★★★★

大見出し

ものと変化 エネルギー 科学と方法 諸科学の方法論 物理学の方法と法則 科学における数学の役割 論理と言葉 存在的真理

 

2005/09/13

『英語から学ぶイタリア語会話』 著:白崎容子/マリーサ・ディ・ルッソ

1991 創拓社 174P

あまり英語から学べません……。

動詞変化で主語を吹っ飛ばせるという、英語がヨーロッパ語の基本だと思っている人々からすれば、

目玉飛び出るような新鮮さ溢れるノリと勢いの言語だったりしますし、

単語もあまり似通っていないので、微妙なところです。

とりあえず、役には立ちますけれど。

推奨度

★★★★

 

2005/09/12

『時間のパラドックス 哲学と科学の間』 著:中村秀吉

1980 中公新書 208P

問題投げかけたはいいけど、投げっぱなしで終わっちゃっています。

時間論を解決できるなんてそんなことやってのけてしまう方が驚天動地なわけですから、

当然といっては当然なのでしょうけれど、

もう少し何らかのオチなり著者独自の見解を示して貰えれば善かったかなと思います。

マクタガートの時間論解説も難解ですね〜、

入不二さんの著書でも手に取ってみようかと思いました、二年前からオススメされ続けているので……。

推奨度

★★★

見出し

時間の流れ 時間は流れる 流れるものは何もない 時間と事物 直線的時間概念が生ずるまで 直線的時間と円環的時間

時間に始まりがあるか 時間の長さ 物差がなければ長さもない 時計の原理─周期性の利用 時計の歴史 法則的認識に支えられて

マクタガートの時間論 A系列とB系列 事象は変化するか 二つの順序関係 時間は存在しない? マクタガート理論の評価

「いま」を定義する 脈絡への依存性 印章反射性 還元の問題 時間の流れと主体 カントの二律背反 時間の論理的構成

前後関係の始原性 事象からの瞬間の構成 事象からの時間の構成 連続性の問題─関係論的見方の難点 時間の長さの導入

同時性の問題 瞬間と現在 瞬間的現在から生ずるパラドックス 過去把持 外見的現在 ブロードの批判 行為が現在の幅を決める

現在の実在性の問題 過去と記憶 過去命題の有意味性 真理条件と証拠 記憶の種種相 究極の証拠となるもの 未来と行為

未来は非実在か 知覚は未来にも食い込んでいる 未来の知識の貧しさ 未来命題が受ける制約 行為と目的実現

法則的認識にもとづいて 時間の方向 方向を持つということの意味 熱力学の第二法則 時間の因果理論 過去と未来の非対称性

原因としての行為 過去と宿命論 宿命論の構造 過去と未来に対する知識と行為の関係 ゼノンのパラドックス(I)

ゼノンの四つのパラドックス 競争場のパラドックス 飛矢のパラドックス 飛矢のパラドックスと解析学 弁証法論者の運動論

ゼノンのパラドックス(II) 二つのパラドックスの同質性 無限機械 ベルグソンの考え アリストテレスの立場 ジェームズの考え

数える操作との違い

 

2005/09/11

『物理講義』 著:湯川秀樹

1977 講談社学術文庫 218P

原著は1978年刊。

日大での理学系大学院生を主な対象とした講義録で、基本的な物理概念の説明なんかは飛ばされていますので、

そこそこの予備知識が無いと、文章自体は読みやすくて面白いのですが、分かりにくいかもしれません。

予備知識があれば、スラスラ読めて面白いものと思いますが。

ただ予備知識なくとも、補注がとっても丁寧懇切に書いてありますので、

そちらを参照していけば読めるものと思いますが、懇切丁寧でも難解には変わりないので……。

本著においては、湯川秀樹の卓抜した先見性がよくよく知れます。

21世紀入った今でも先見的過ぎて理解できない部分があったりもしますが、私の頭が足りないだけでしょうか。

推奨度

★★★★

見出し

素粒子の世界の奇妙さ 歴史から何を学ぶか 創造の原点に帰る 実在感のなかったニュートン像 ニュートンの物質観

創造の内的動機 ハイゼンベルクの“中心的秩序” 質点と剛体 角運動量の問題 ひずみと応力について 物理学は“思惟の経済”か?

遠隔力と近接力 マクスウェルによる解決 科学者分類学─孤立型、対話型、集団型 会議の効用 ニュートン力学における空間

ベクトルの歴史 空間の点に名前を付ける 見かけの力と本当の力 マッハの解釈 ニュートンの偉大さ 絶対空間をめぐって

“場”とは何か 相対論における場 特殊相対論による場の制約 特殊相対論による場の制約 ニュートン力学的因果律─ラプラスの魔

余話─ラプラスとその時代 特殊相対論の因果律 量子“論”と量子“力学” 波動ということ─エーテルから場へ

不確定性関係を導く二つの方式 物理学における認識 電子の拡散 古典的因果律からの転換 シュレーディンガーの猫

量子力学の完成─場の量子論 量子力学と特殊相対論 孤高の理論・一般相対論─一般共変性をめぐって

物理量と幾何学的量とのアイデンティフィケーション 入れ物(時空)と中身(物質) 一般相対論はミクロの世界と無関係か?

素粒子論─局所場と非局所場 差分的な考え方による可能性 余話─外界認識の連続性と不連続性