読書記録
21
2005/11/07
『傭兵の二千年史』 著:菊池良生
2002 講談社現代新書 229P
とかく無視されがちな存在である傭兵。
しかしブローデルを持ち出すまでもなく、
彼らは短期的持続と中期的持続の狭間にいるとでも表現できるような重要な存在です。
それを生き生きと描き上げているのが本書。
軍事史として読めるのは当たり前、政治史のおさらいとしても社会史としても読めます。
現代的な像しか浮かばない人は、これで傭兵観がガラリと変わることでしょう。
推奨度
★★★★★
大見出し
クセノフォンの遁走 パックス・ロマーナの終焉 騎士の時代 イタリア・ルネッサンスの華、傭兵隊長 血の輸出 ランツクネヒトの登場
果てしなく続く邪悪な戦争 ランツクネヒト崩壊の足音 国家権力の走狗となる傭兵 太陽王の傭兵たち 傭兵哀史 生き残る傭兵
2005/11/05
『中世に国家はあったか』 著:新田一郎
2004 山川出版社 100P
日本史リブレット。
この題名にして、結論部で衝撃的な一文が。
「中世に国家があったかなかったかは、実はどうでもよい問題なのかもしれない」
いやもうその通りだと思うのですよ。
で、ベネディクト・アンダーソンの論を基に、次のような論に展開します。
「「想像」に依拠し「想像上の」ものであることを承知のうえで、
共有された規準系・参照枠あるいは拘束としての国家というメカニズムの作用を、
われわれの認識構造に照らしてどのように把握し、
いかにしてわれわれ自身の責任と制御のもとにおくかをこそ、考えるべきなのかもしれない」
有無よりも本質を見ろ、と。
推奨度
★★★★
見出し
本書は何を問題にするのか 日本の「中世」とは何か 日本における「中世」 歴史意識における「中世」 ふたたび日本史における「中世」
中世国家論の諸相 古い物語─武士と民衆の物語 朝廷の見直しと議論の錯綜 二つの契機 「国土」と「国境」の構造 「境界」の認識
「渡海の制」 「冊封」の変質 「伝統」の(再)創出 「神の国」の始まり 古代国家の遺産 近世国家への道 「国家」とは何か
2005/11/03
『啓蒙都市ウィーン』 著:山之内克子
2003 山川出版社 90P
世界史リブレット。
なので、下二冊に比べると非常に平易で入門的。
なもので、逆に特筆すべき点も薄れてしまう感がありますが、
敢えて挙げるならば、フリーメイソンを取り上げているところでしょうか。
情報流通の“場”の強調として、フリーメイソンの存在は抜くことのできないものなのですが、
その性格や誤った偏見ゆえに結構無視されがちだったりもしますので……。
推奨度
★★★★
大見出し
「光の世紀」と啓蒙専制主義 改革の時代と都市の変容 新しい都市の文化 啓蒙の都市空間 近代的都市生活の成立
2005/11/01
『ドイツにおける都市史研究の現状』 著:E.エンネン 編:鵜川馨
1979 立教大学 65P
講演ものなので読みやすいはずですが、これまたとても専門的なので分かりにくいかもしれません。
そして、今となっては結構常識的なものとして取り入れられている概念ですので、新鮮味も無いかもしれません。
が、討論部で語られているBurgとStadtの違いというのは、本当に興味深い。
とりあえず、討論のところだけ読むというのはオススメです。
推奨度
★★★
2005/10/31
『近世ドイツ帝国国制史研究』 著:渋谷聡
2000 ミネルヴァ書房 220P
一般読者にお勧めしてもしょうがないかなとも思いますけれど……。
完全に専門書。
私なんかは面白く読めましたが、歴史殊にドイツ史専門でもない人が読んで面白いかどうかは不明。
等族という単語を見たことも聞いたこともない予備知識の無い人は、つらいこと必至かもしれません。
ただ、良著であることだけは保証します。
ちなみに、等族とは帝国に於ける高貴な諸身分という意味です(大体)
この、素人お断りな壁は、何とかしたいものですが……。
わかりやすい結論部の一節を抜き出しておきましょう。
「したがって、1648年以降の近世ドイツ史の展開の主軸に領邦国家の主権性を見いだし、
その頂点にオーストリアとプロイセンの「二元主義」をおく、
いわば「小ドイツ」的史観は、18世紀半ばごろまでについてはいまだ成り立たないことになる。
この時期までの近世ドイツは、なお旧き帝国史の継続性のなかにあったのである」
推奨度
★★★★
見出し
帝国国制史研究の諸前提 帝国国制史研究の現状 連邦的体制としての帝国 政治史システムとしての帝国 帝国クライス制度の概要
帝国国制史研究の意義について 国民国家の再検討との関わり 16・17世紀における国家形成 等族制集会と政治的意思形成
近世ドイツ帝国の等族制集会 帝国議会の制度的概要 等族制集会に関する諸研究 帝国の一体性と帝国議会
政治的意思形成の原理と構造 事件の政治・宗教的背景とその概略 関税闘争と3クライスの対応 対トルコ戦争と帝国クライス制度
帝国収税長官と帝国クライス 帝国税制の概要と帝国収税長官 媒介項としての帝国収税長官ガイツコフラー
帝国収税長官ガイツコフラーの対トルコ防衛政策 シュヴァーベン・クライスにおける遠征軍の組織と管理
前提─内部平和維持組織としてのクライス クライスの集団防衛体制 遠征軍の組織と管理 永久帝国議会とクライス制度
永久帝国議会をめぐる研究の現状 ヴェストファーレン講和条約の意味するもの 永久帝国議会と帝国国制
クライス制度との連関(1662〜1664年) 対トルコ戦争(1662〜1664年)にみるクライス制度
2005/10/28
『世界システム論で読む日本』 著:山下範久
2003 講談社選書メチエ 260P
とても優れた一冊。
ウォーラーステインの直弟子という著者が、云ってみれば山下流世界システム論を論じたもの。
題名は、読後の感想としてはやっぱり相応しくないように思いました。
完全に、『日本を例外にしない世界システム論〜近世帝国概念を軸に〜』という感じの趣。
全体の波が感じられにくく、常にオーバーヒートし続けて走る暴走列車の如きテンションなので、
読むのに疲れましたし、一読で把握するのがなかなかに困難でした、というか、理解しきれていないこと確実。
著者がまだまだ自身の裡に咀嚼しきれていないままに書いているということもあると思いますが。
ただ、この本の重要性だけはつとに認識できました。
そのうちまた読んでみようと思える良著です。
推奨度
★★★★
見出し
「新しい世界システム論」へ 世界システム論を超えて 現実に追いつかれた理論 「発展」と「従属」─世界システム論にいたる問題意識
世界システム論とウォーラーステインの沈黙 「世界システム分析第二局面」を超えて グローバルな「長期の16世紀」
ウォーラーステイン=ブローデル・モデル 理念的存在としての近世帝国 五つの近世帝国 近世帝国と日本
求心性の二重構造─普遍性の分有 東アジアにおける理念的近世帝国の形成と日本 「典型的」世界=帝国と近世帝国
オランダ植民地主義の近世的限界 近世帝国の解体とグローバリゼーションの歴史的起源 1800年の世界 ポランニーの「転換」概念
「転換」の構造─空間的文脈の真空と時間的パラダイム 「近代化」概念の脱構築と日本
東アジアで顕在化する「グローバリゼーションのカエスラ」 文脈の過少決定と過剰決定 「開国」概念の没文脈性
構想力の選択と主体の創造力 緩衝地帯への矛盾の集中と辺境からの近代化 グローバリティの変容と日本 「近世帝国」概念の意義
「長期の16世紀」と「グローバリティのカエスラ」 新しい近世帝国?
2005/10/27
『中世シチリア王国』 著:高山博
1999 講談社現代新書 204P
読むのは二度目。
世界に名だたる中世シチリア研究者高山先生の簡易で面白い中世シチリア王国入門書。
もちろん、入門書としてだけでなく、きれいにまとまった研究書としても参照可能です。
著者の何がすぐれているのかというと、特に以下の点を指摘したこと。
「私は、王国行政制度の先進性と高度な官僚化を示す根拠とされてきたこの財務行政機構については、
従来考えられてきたほど複雑なものでも専門化が進んだものでもないと思っている。
研究者たちの議論を検討すると、ラテン語、ギリシャ語、アラビア語の言葉の対応関係を見極めなかったために、
同じ機関を別の機関と見誤ったり、ロゲリウス二世期に属する機関とウィレルムス二世期に属する機関を混同して、
実際以上に複雑で高度に専門化した行政機構を提示しているからである」
中世南イタリア、殊に中世シチリア王国というのは、上記の三言語が入り乱れていて、非常に研究しにくいところです。
ちなみに、同様にして中世イベリア半島も。
なので、現地人も厄介がって専門家になりたがらない程の分野。
それでも存在する数少ない研究者にとって、上の指摘はまさに青天の霹靂。
そしてこうなってくると、既存の他分野においても同現象が見られないかという疑念が持ち上がってくることに。
これが歴史研究の一つの特質です。
推奨度
★★★★★
見出し
もう一つの中世ヨーロッパ 地中海の万華鏡シチリア─錯綜する歴史 ノルマン人の到来─地中海とノルマン人
王国への道─シチリア伯領からシチリア王国へ 地中海帝国の夢─ロゲリウス二世の新王国
強大な官僚国家へ─ウィレルムス一世悪王と宰相マイオ 動乱から安寧へ─ウィレルムス二世善王の時代
南国の楽園─めずらしい果物の島、美しい建物の町 異文化接触の果実─イスラム、ギリシャ、ラテン文化の出会い 混迷の時代へ
2005/10/26
『後醍醐天皇と建武政権』 著:伊藤喜良
1999 新日本新書 190P
恐らく最も色々な評価に別れる天皇である彼。
その割に南北朝時代研究が少ないのは、色んなプロパガンダのせいですが、
とかく彼への評価が時代によってコロコロ変わったせいというのが第一。
著者が左寄りだったりすることはさておいて、近年の研究を土台にしてあるよくまとまった一冊です。
推奨度
★★★★
見出し
建武政権成立の歴史的前提 海の中の日本 日本の北と南 支配矛盾の拡大 苦悩する鎌倉幕府 王統の分裂と幕府 陰謀から倒幕へ
後醍醐の親政 天皇「御謀反」 畿内騒然 鎌倉幕府の滅亡 建武政権の一年 後醍醐の帰京 夏から秋へ 春を謳歌する
新政権の中央と地方 倒幕一年後の状況 物狂の沙汰 地方の国衙と陸奥国府 東国と鎌倉将軍府 矛盾と批判
栄華と憤怒の公家と武家 公武一統 「公武水火の世」への批判 落日の日々 中先代の乱 建武政権崩壊へ 動乱の世へ
変転する建武政権の評価 「悪王」から「聖帝」へ 王権の性格をめぐって 東アジア世界の中の建武政権
2005/10/25
『近世村人のライフサイクル』 著:大藤修
2003 山川出版社 106P
下と替わってこちらは近世。
特に、農村部における社会史ですね。
死生観というものを中心に、連綿と続く家柄意識や村意識というものが強く描かれています。
教育が重視されるのも、家、村への貢献という点が強いです。
識字率が同時代の西洋に圧倒しているというところは、看過できないでしょう。
推奨度
★★★★
見出し
ライフサイエンスとしての歴史学 近世の家と村 近世的村共同体の成立 小農民の「家」意識の成立と家屋の標準化
小農的「家」システムの成立と村 子どもの誕生と育児 子育てへの関心の強まりと広まり 「子宝」意識の成立
家族計画意識の芽生えと堕胎・間引き 名づけと育児 誕生・生育を支える人々と神々 捨て子と私生児
公権力の堕胎・間引き禁圧と産育管理 出産への医師の関与 家と村における教育 家における教育 遊び仲間と子ども組
男子の成人と一人前 若者組の役割と教育機能 若者組の秩序からの逸脱 女子の成人と娘仲間 読み書き計算能力の必要性
寺子屋教育の普及 結婚・相続と家長・主婦の役割 出稼ぎ奉公と結婚 離縁と再婚 家の相続 家長の役割・責任と家・共同体の規範
女性の財産と主婦の役割 老いと死 老いと養生 老後の生活 老人の役割 老人の扶養と介護 先祖と無縁仏
2005/10/24
『中世社会と現代』 著:五味文彦
2004 山川出版社 103P
あまり現代との繋がりが深い描写もありませんが、視点としてのそれがあることだけは窺えます。
日本中世の“心性”を考えるには最適な入門書といえるでしょう。
果たして日本に中世があるのかどうかは別問題になってくるわけですが。
推奨度
★★★★
見出し
現代社会を考える手掛かり 足元から中世を探る 道から考える 道と都市 信仰の道 道と勧進 政治権力を考える 院政と武家政権
鎌倉幕府と武士連合 合議と専制 自力による救済 信仰の世界からみえるもの 仏教と民衆 神仏への信仰 契約と起請文 一揆の場
民衆の世界からみえるもの 一味神水と惣 戦乱と富の蓄積 銭の流通と「資本主義」 描かれる民衆世界 列島の地域社会から
北方の世界、平泉から 院政と藤原氏三代 鎌倉の景観と文化 六つの文化 荘園の跡をたずねて 列島の北と南を旅する
歴史のサイクルをとおして 100年ごとの大変化 東アジア世界との連動 中世から現代への100年 中世社会の豊かさ